チ ョ コ 6 ページ26
Aside
·
「Aだから、やってるだけでィ」
わざわざ来てくれて嬉しいとか。
手伝うなんて言ってくれて優しいとか。
それまで考えていたことが、全部吹っ飛んだ。
あたし、だから。
相手が、あたし、だから。やってるだけ。
どういう、意味?
どくんと、心臓がひとつ、大きく波打つ。
あたしのために、やってくれてる。
目が回っていくような気がして、胸がいっぱいになって、ああ、と納得してしまう。
こんな彼だから。
いつも悪態ついてるくせに、あたしを掬い上げてくれるようなことを言ってくるから。
あたしは、総悟が。
『…すき』
思わず口から飛び出した本音は、静かな図書室に大きく響いた。
あ。
やっばい。
やらかした。
「え」
目を見開いた総悟は目の前で、本を拾い上げた体勢のまま固まってて。
どうしよう、と頭が働き始めた。
『あの、えっと』
様々な言い訳が思い浮かんでは消えていく。
そう言いたかっただけ…なんて、言えるはずもなく。
「A」
総悟はあたしの名前を呼んだ。
焦りと恥ずかしさで顔をあげられない。
「おい」
これじゃ告白も同然。
どうしよ。
「こっち見ろィ」
ぐい、と顎を掴まれて顔をあげさせられる。
端正な総悟の顔がぐっと近くにいた。
状況を把握して、さらに顔が熱くなる。
「…俺も、お前が」
心臓の音が、耳元で聴こえる。
がらっ!
「あっはっはっ、サングラスは、と…、あれ?」
突然開けられた図書室のドア。
あ、
「えっ、何でお
…今あたしは床に座り込み、総悟に顎クイされている状況である。
なんでこのタイミングでそんなこときけるの坂本先生!なんでこのタイミングで現れるの坂本先生!
『た、担任に頼まれて、図書の片付けを』
「わしはサングラスを忘れて…あ、あったぜよ」
坂本先生はサングラスを装着し、そのまましゅるしゅると図書室から去っていった。
「…な、んでィ、これ」
あたしと総悟は互いに力が抜け、思わず笑い合う。
ああ、やっぱりあたし達には、これくらいがちょうどいいのかもしれない。この、緩さが。
『総悟、片付け終わらせて、一緒に帰ろう』
チョコを渡すのは、総悟の話の続きを聞くのは、その時でも遅くない、はずだ。
「だねィ」
総悟も頷き、照れたように笑う。
早く、片付けよう。
今度は暑さを感じながら、あたしは本を持って立ち上がった。
__チ ョ コ 終__
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みるくれーぷあいす(プロフ) - 氷華さん» ありがとうございます!嬉しい限りです! (2019年12月25日 16時) (レス) id: 147ef4680d (このIDを非表示/違反報告)
氷華 - 神威君ーーーーーーーーー! この小説いいね♪ (2019年12月25日 12時) (レス) id: e5c89771f4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みるくれーぷあいす | 作成日時:2019年8月27日 1時