ヒーローとてのひら ページ7
Aside
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強引な二人に、私は『離してください』と手を振り払おうとした。でも力が強い。ニヤニヤ顔の男ふたりは無視して私を引っ張る。
「近くにショッピングモールあるからさ、そこでお茶しようよ」
『お断りします』
「そう硬いこと言わずにさぁ」
私の話を全く聞いてない。まずい。
こんな一方的に連行しようとするのだ、ついていったら危険な目に遭うかも。足を止めて踏ん張るも、ずるずると引きずられてしまう。
…あぁ、どうしよう。大声出した方がいいのかな、でも、ああ、どうしよう。
『や、やめてくだ…』
「あの」
後ろから、ぐいとかなり強い力で肩を引かれて、私は後方につんのめった。
ふいに鼻についた蜂蜜の匂い。
善逸。
「やめてくれませんか。嫌がってるでしょ」
丁寧な口調ではあるものの、その声は冷たい。私は後ろを振り返って、彼の顔を見た。
黄金色の瞳を不機嫌そうに細め、ぐっと鋭く男ふたりを睨んでいる。
ああ、善逸だ。ほっとして、力が抜けかける。
「寒そうだから暖かいところに行こうっつってただけだよ、なぁ?」
「そーそー。ここで待ちぼうけなんてカワイソ」
一瞬面食らった顔をした二人組だったが、すぐにもとのヘラヘラした表情にもどる。私の腕を離そうとはしてくれない。
「君こそなんなの?正義のヒーロー?」
安い挑発に、腹の底が熱くなるのがわかった。こいつら、ほんと腹立つ。
しかし善逸は、冷静な表情のままで言い放った。
「彼女、俺の連れなんで。離れてください。…行こう、A」
善逸は掴まれていない方の私の手を握って、素早く引っ張った。衝撃で男の手が離れる。
『あ』
「さよなら」
善逸は振り返ることなく、私を引っ張って歩いていく。
ちっ、という舌打ちが後ろから聞こえた。
繋がれた手が、あたたかい。すべすべとした善逸の手の感触が直に伝わって、冬のさなかだというのに猛烈に体が熱く感じられる。
『え、えと、善逸』
「あっ、ごめん!」
善逸はぱっと私の手を離し、こちらを振り向いてきた。
「大丈夫?変なことされなかった?あの二人、先輩なんだけど、いろんな女の子にちょっかいかけててさ」
不安げに口を動かし、私をじっと見つめる善逸。相変わらず表情は大人びている。
『うん、だ、大丈夫。ありがとう、助かった』
「よかった」
善逸はほっと息を吐くと、私の頭に手を載せた。…てをのせた?
「危機感持ちなよ、もうちょい」
頭に伝わる仄かな熱に、心臓がどくりと音を立てる。
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凛櫻 - 心臓が飛び出そうなぐらいキュンキュンしました…!! え、善逸カッコ良すぎでしょ、、が止まりませんでした!! 素敵な作品をどうもありがとう!! (2020年5月18日 11時) (レス) id: c829f486b3 (このIDを非表示/違反報告)
みるくれーぷあいす(プロフ) - りついちさん» ありがとうございます!鬼滅のキャラを現代でちゃんと動かせているか結構不安だったので、楽しんでいただけてよかったです! (2020年2月19日 22時) (レス) id: 147ef4680d (このIDを非表示/違反報告)
りついち - 完結おめでとうございます!!現パロの純な恋愛物語って新鮮だったので毎回読むのが楽しみで楽しみで…本当に素敵なお話をありがとうございました! (2020年2月19日 21時) (レス) id: 9c40eb9251 (このIDを非表示/違反報告)
みるくれーぷあいす(プロフ) - 羽結さん» ありがとうございます!楽しんで読んでいただけたようで、嬉しい限りです。 (2020年2月17日 10時) (レス) id: 147ef4680d (このIDを非表示/違反報告)
羽結(プロフ) - 素敵な作品ありがとうございました、毎回毎回の更新にドキドキしてました、、本当に素晴らしかったです、お疲れ様でした!!! (2020年2月17日 7時) (レス) id: ca2da2f188 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みるくれーぷあいす | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ykoma1218/
作成日時:2019年12月24日 16時