その日に向けて ページ38
Aside
·
『もしもし、天元?』
画面には【宇髄天元】の文字。出ると、《ようよう、元気か?》と聞いてきた。
『元気だよ。いきなりどうしたの』
《いや、そろそろここ出発して、次のコンサート会場に行くからよ。挨拶だ》
ああ、もうか。ピアニスト宇髄天元はかなり忙しい。確か次は札幌の方でコンサートをすると言っていた。
でも、今までわざわざ出発する時に電話をよこしてきたことなんてなかった。なんで、と聞こうとする前に、《…っつーのは建前で、》と再び天元が喋り始める。
《その後、どうよ、我妻くんとは?進展した?》
…なんというタイミング。千里眼?
『えっ、あ、まあ、うん。く、クリスマスデートに、誘われました』
改めて言葉にすると嬉しさと小っ恥ずかしさがこみあげてきて、私は近くにあったクッションを握りしめた。
《ほぉー!やるじゃねえかアイツ!よかったな、A!》
電話越しに、天元が派手に喜んでいるのが伝わってきた。にししという笑い声も聞こえる。
…やたらとおちょくってくるし、いじわるしてくる時もあるけど。
こういう、私にあったいいことを一緒に喜んでくれるし、笑ってくれるから、私は天元のことを本当の兄みたいにしたってるんだろうな、と、思った。
『うん、色々ありがとね、天元も』
《俺は別に何もしてねえよ。いやあ、期待していいんじゃねえの、これ》
天元が自分の事のようにワクワクとしている様子が目に浮かんで、私も笑った。
《…そんじゃ、楽しい年末過ごせよ。ちょっと早いけど、メリークリスマス》
『うん、メリークリスマス、天元』
そんな会話を交わして電話を切る。次、天元に会う時は年明けかな。
あれ、私、天元に善逸の苗字、教えたっけ?
…それに気づいたのは、とっくにスマホのディスプレイが暗くなった後だった。
***
「あ、A」
『カナヲちゃん』
きたるクリスマスイブに備えて、私はショッピングモールにいた。目的は、善逸へのクリスマスプレゼントを買うため。
そこに偶然、カナヲちゃんがやってきた。
『この間ぶりだね』
「そうね。Aは買い物?」
『あ、うん、そんな感じ』
善逸にプレゼントを買いに来ました、とは言えなかった。はは、と笑って誤魔化す。すると、カナヲちゃんはじっと私の手元を見た。
「…もしかして、誰かにプレゼント?」
『なっ』
なんでわかったの、と聞こうとしてやめる。私が今持っているのは男物のマフラーだ。そりゃ、バレる。諦めて頷いた。
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凛櫻 - 心臓が飛び出そうなぐらいキュンキュンしました…!! え、善逸カッコ良すぎでしょ、、が止まりませんでした!! 素敵な作品をどうもありがとう!! (2020年5月18日 11時) (レス) id: c829f486b3 (このIDを非表示/違反報告)
みるくれーぷあいす(プロフ) - りついちさん» ありがとうございます!鬼滅のキャラを現代でちゃんと動かせているか結構不安だったので、楽しんでいただけてよかったです! (2020年2月19日 22時) (レス) id: 147ef4680d (このIDを非表示/違反報告)
りついち - 完結おめでとうございます!!現パロの純な恋愛物語って新鮮だったので毎回読むのが楽しみで楽しみで…本当に素敵なお話をありがとうございました! (2020年2月19日 21時) (レス) id: 9c40eb9251 (このIDを非表示/違反報告)
みるくれーぷあいす(プロフ) - 羽結さん» ありがとうございます!楽しんで読んでいただけたようで、嬉しい限りです。 (2020年2月17日 10時) (レス) id: 147ef4680d (このIDを非表示/違反報告)
羽結(プロフ) - 素敵な作品ありがとうございました、毎回毎回の更新にドキドキしてました、、本当に素晴らしかったです、お疲れ様でした!!! (2020年2月17日 7時) (レス) id: ca2da2f188 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みるくれーぷあいす | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ykoma1218/
作成日時:2019年12月24日 16時