約束 ページ37
Aside
·
「…ねぇ、A」
やがて善逸は笑いをおさめ、やけに真剣な様子で言った。
彼の声のトーンが、ほんの僅かに下がる。いつもは高めの声が少し低くなったときの善逸には、昔からドキドキさせられていたっけ。
改めて善逸を見ると、声にぴったりな真面目な表情をしていて。まっすぐな琥珀の瞳に、自分の顔が映り込んでいるのがわかった。
『うん、どう、したの』
…天井のエアコンから排出される温風が、善逸の金髪を撫でていく。
一瞬の沈黙の間、図書館内の抑えられた人々の音がよく聞こえた。
「クリスマスイブの日、暇?」
空気をたっぷり含んだような、こそこそ声で。
善逸は、尋ねてきた。
…どっ、と自分の心臓が一際音を立てて血液を送り出す。
…来週に迫ったクリスマス。
特に予定は無い。
『暇、だよ』
「そっか。じゃ、さ」
善逸は私から視線を外すことなく、言った。
「よかったら、その日、会わない?」
クリスマスイブの日に、男女が一緒にいる。
それって、すなわち。
…クリスマスデート?
ぼんっと頭に浮かんだ単語の恐ろしさに、私は何度も瞬きした。いや、でも。でもこれって。
高揚とふわふわの混じった喜びと嬉しさが、ぶわっとこみ上げてくる。
「…いや、もちろん、良かったらでいいんだけど」
『会う!』
思わず声の音量を抑えるのを忘れてしまい、慌てて自分の口に手をやった。
『会いたい、私も。善逸と、クリスマス』
ぶつぶつと途切れた単語になってしまうのが悔しい。図書館内の空調とは関係なく、体が熱くなっていった。
「…ほんと?やった」
再びきらきらとした笑顔を見せる善逸。喜びと嬉しさとドキドキと、様々な感情が混ざりあって私の胸中はもうはちゃめちゃだ。
うん、うん、と私は何度も頷いた。
好きな人と、クリスマスイブに、会う。
向こうにその気がなくても、これは、デートだ。私から見れば、十分。
ああ、もう。なんて表したらいいかわからないくらいのハッピーな感情が弾けて、辺りを駆け回りたい気分になる。
善逸と目を見合わせて、また笑う。
彼の揺れる髪の毛が、きらめく目が、柔らかな口元が。この上なく愛おしく感じて、くすぐったくなった。
***
その日のうちに予定を決めて、私たちはそれぞれの帰路についた。
大学から少し海の方に行くと、有名な観光地がある。デートスポットとしても人気なその街に行くことになり、一人でにやけてしまう。
自宅でまたにやにやしていたその時、携帯電話が鳴った。
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凛櫻 - 心臓が飛び出そうなぐらいキュンキュンしました…!! え、善逸カッコ良すぎでしょ、、が止まりませんでした!! 素敵な作品をどうもありがとう!! (2020年5月18日 11時) (レス) id: c829f486b3 (このIDを非表示/違反報告)
みるくれーぷあいす(プロフ) - りついちさん» ありがとうございます!鬼滅のキャラを現代でちゃんと動かせているか結構不安だったので、楽しんでいただけてよかったです! (2020年2月19日 22時) (レス) id: 147ef4680d (このIDを非表示/違反報告)
りついち - 完結おめでとうございます!!現パロの純な恋愛物語って新鮮だったので毎回読むのが楽しみで楽しみで…本当に素敵なお話をありがとうございました! (2020年2月19日 21時) (レス) id: 9c40eb9251 (このIDを非表示/違反報告)
みるくれーぷあいす(プロフ) - 羽結さん» ありがとうございます!楽しんで読んでいただけたようで、嬉しい限りです。 (2020年2月17日 10時) (レス) id: 147ef4680d (このIDを非表示/違反報告)
羽結(プロフ) - 素敵な作品ありがとうございました、毎回毎回の更新にドキドキしてました、、本当に素晴らしかったです、お疲れ様でした!!! (2020年2月17日 7時) (レス) id: ca2da2f188 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みるくれーぷあいす | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ykoma1218/
作成日時:2019年12月24日 16時