いたずらに ページ36
Aside
·
よかった、本当に。
別れる前の大喧嘩で、私はだいぶひどいことばっかり善逸に言っていた。
もし同じようなことを無意識のうちにしていて、善逸を傷つけていたり、嫌な思いをさせていたりしたら。それはそれはもう、とんでもない失態だ。好きな人を、自分の手でひどい目に遭わせているわけなのだから。
善逸が違うと断言してくれて、心が軽くなった。
もう一度ほうっとため息をついて、自分のシャーペンのノック部分をいじる。
「A、そこまで気にしてたの、あの時の喧嘩」
『気にしてたよ。原因はくだらなくても、ひどいことばっか言っちゃったし』
善逸をかなり責め立ててしまっていた覚えがある。ああ、若いって怖い。いやまあ、二年前だけど。
…それほどの喧嘩(お菓子が原因とはいえ)をしたのに、善逸は優しく接してくれる。
申し訳ないような、嬉しいようなこそばゆさが喉の奥からせりあがってきた。
《いつもありがと》
善逸とイヤホンをはんぶんこしたときに言われた言葉が、脳裏に蘇る。
…むしろ、お礼を言うのは、私の方だ。
『また私と仲良くしてくれて、一緒にいてくれて、ありがとう。私も、楽しいよ』
気づいたらあの日の返答のように口から言葉が飛び出ていた。
自分でもびっくりして、飛び上がりそうになる。あれ、あれ、ちょっとなにいってるんだろ、私。重くない？あれ？
やばいやばい、ふわふわした気分に冒されすぎたのかもしれない。どう弁明すればいいかも、そもそも弁明した方がいいのかも分からず、私はおろおろと善逸を見た。
善逸は再び、その綺麗な瞳をまんまるに見開いていて。
やがてゆっくりと、口角を上げていった。
「そっ、か。そっか、ふふ」
目を細めて、頬を緩めて。
善逸は、とてもとても嬉しそうに、笑った。
その笑顔は、最近彼が見せていた大人っぽい笑みよりは、高校時代の、表情筋をめいいっぱい使ったような笑顔に似ていて。
…ああ、なんだかあったかいな、と。胸が切りつけられたような気がした。決して痛いものじゃなくて、じんわりとやわらかく熱が伝わるような、心地よい温かさが、体を満たす。
「そう思ってくれて、俺も嬉しい」
こそこそ声で善逸が返した言葉に、熱は増す。
好きな人が嬉しそうにしていると、こっちまで嬉しくなる。しかもそれが、自分の言葉によってもたらされたものだと思うと、余計に。
…これがいわゆる、「キュンとした」なのかしら。
…自分で考えて照れてしまった。
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凛櫻 - 心臓が飛び出そうなぐらいキュンキュンしました…！！ え、善逸カッコ良すぎでしょ、、が止まりませんでした！！ 素敵な作品をどうもありがとう！！ (2020年5月18日 11時) (
レス) id: c829f486b3 (このIDを非表示/違反報告)
みるくれーぷあいす(プロフ) - りついちさん» ありがとうございます！鬼滅のキャラを現代でちゃんと動かせているか結構不安だったので、楽しんでいただけてよかったです！ (2020年2月19日 22時) (レス) id: 147ef4680d (このIDを非表示/違反報告)
りついち - 完結おめでとうございます！！現パロの純な恋愛物語って新鮮だったので毎回読むのが楽しみで楽しみで…本当に素敵なお話をありがとうございました！ (2020年2月19日 21時) (レス) id: 9c40eb9251 (このIDを非表示/違反報告)
みるくれーぷあいす(プロフ) - 羽結さん» ありがとうございます！楽しんで読んでいただけたようで、嬉しい限りです。 (2020年2月17日 10時) (レス) id: 147ef4680d (このIDを非表示/違反報告)
羽結(プロフ) - 素敵な作品ありがとうございました、毎回毎回の更新にドキドキしてました、、本当に素晴らしかったです、お疲れ様でした！！！ (2020年2月17日 7時) (レス) id: ca2da2f188 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：みるくれーぷあいす | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ykoma1218/
作成日時：2019年12月24日 16時
