ニヤニヤ ページ31
善逸side
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なんとか勇気を奮い立たせて彼女をお茶に誘い、ドーナツショップに入った。
適当にドーナツを選んでお金を払う。何とかチャンスをものにできた、という喜びとちょっとの緊張で、わりと心臓がバクバクしていた。
顔に出てないことを祈る。
『善逸、すごく大人っぽくなってたから。食べ物の好みも変わったのかなって思ってたんだけど』
俺が選んだドーナツを見て、好みが変わっていないと笑ったA。
…俺が、大人っぽくなった。
その言葉は、少しでもAに踏み出せるよう、落ち着いた人になろうと思っていた自分に、かなり響いた。しかも、Aがそう言ってくれて。嬉しいことこの上なかった。
それに、私服だからだろうか。Aも、きらきらした大人に見える。
思わずそれを口に出してしまって、死ぬほど焦った。Aが笑い流してくれたからよかったけど、一歩間違えたらただの気持ち悪い奴だ。危ない危ない。
Aと楽しくおしゃべりを続けて、連絡先を新たに交換し直して。
そして次の日から、俺はAと一緒に通学するようになった。バスで乗り合わせる時間は少しだったけど、全く会えていなかった今までのことを考えるとすごく濃密な時間だ。
…Aと飲んだ時のことは恥ずかしいから思い出さないでおく。いきなりAが机に突っ伏したかと思えば寝始めるし、緊張感と背徳感をばしばし感じながらおんぶして自分の家に運ぼうとしたら、くっつかれたし。無意識だったんだろうけど、寿命の半分を浪費した気分だった。
ほぼ毎朝Aと会って、話して、時々遊んで。
だんだんと、昔の頃のようになれてきたんじゃないか、なんて思っていた。関係は戻りつつあるんじゃないか、と。
──けれども、俺とAの間には埋められない二年間の差があるのだ。俺はそれを完全に忘れていて、そして、思い知ることになる。
大学の帰り、駅のホームで電車を待ちながらスマホを見ていたら、向かい側のホームにAを見つけた。
手を振られたので、ラッキーだなと考えつつ俺も片手をあげて──気づいた。
…Aの隣に、ものっすごいイケメンがいる。
背が高く、距離があるというのにオーラを放っているように見えるそいつ。
イケメンも俺に気づいて、目を細めた。
動けなくなっていた俺をあざわらうかのように片頬を歪め、イケメンはAの頭に手をのせた。
…あいつ、躊躇なくAに触りやがった。
…しかもめちゃくちゃニヤニヤしてやがる。
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凛櫻 - 心臓が飛び出そうなぐらいキュンキュンしました…!! え、善逸カッコ良すぎでしょ、、が止まりませんでした!! 素敵な作品をどうもありがとう!! (2020年5月18日 11時) (レス) id: c829f486b3 (このIDを非表示/違反報告)
みるくれーぷあいす(プロフ) - りついちさん» ありがとうございます!鬼滅のキャラを現代でちゃんと動かせているか結構不安だったので、楽しんでいただけてよかったです! (2020年2月19日 22時) (レス) id: 147ef4680d (このIDを非表示/違反報告)
りついち - 完結おめでとうございます!!現パロの純な恋愛物語って新鮮だったので毎回読むのが楽しみで楽しみで…本当に素敵なお話をありがとうございました! (2020年2月19日 21時) (レス) id: 9c40eb9251 (このIDを非表示/違反報告)
みるくれーぷあいす(プロフ) - 羽結さん» ありがとうございます!楽しんで読んでいただけたようで、嬉しい限りです。 (2020年2月17日 10時) (レス) id: 147ef4680d (このIDを非表示/違反報告)
羽結(プロフ) - 素敵な作品ありがとうございました、毎回毎回の更新にドキドキしてました、、本当に素晴らしかったです、お疲れ様でした!!! (2020年2月17日 7時) (レス) id: ca2da2f188 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みるくれーぷあいす | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ykoma1218/
作成日時:2019年12月24日 16時