たとえるならば ページ4
Aside
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落ち着いた声音、少し細められた目。
ゆるやかな微笑みは、どこぞのモデルのようだ。
その動作が、彼の端正な顔立ちを際立てていた。
…いや、誰?
私の知ってる我妻善逸、こんなオトナな感じの人でしたっけ?
『あ、うん。そっちは?』
「俺もなんとかやってるよ」
鏡を見て練習でもしたのかと勘繰ってしまうくらい、すごくすごく綺麗な笑い方だった。
慌てる様子も焦る様子も微塵もない。
…こんな善逸、知らないんだけれども。
『それは良かったね…』
「うん、お互い」
混乱している自分が情けなくなるくらいの落ち着きだ。
…変わったのか。
私の知らないところで、彼はきっと、ぐっと大人になった。
いささかイケメンになりすぎじゃないですか、とは言いたいが。
「そうだ。あの時、さ」
善逸が突然切り出してきた。
あの時?
私が首を傾げると、善逸は眉を下げる。
「その、喧嘩別れ、しちゃったじゃん?…そのこと、ずっと、謝りたくて」
…しかも、こんな冷静に謝ってきた。
ごめんね、と申し訳なさそうにするものだから、私は慌てて首を横に振った。
『いや、あれは若かったというか、私も酷い態度とってたし、気にしてないよ』
しどろもどろになる私の返事に、善逸は「そうなの?よかったぁ」とほどけるような笑みを見せた。
その陽だまりのようなあたたかさに、思わず胸のあたりがきゅっとしまる。
『こ、こっちこそごめん』
なんだか急かされた気になって、私も手を合わせて謝った。
「ううん。仲直り出来てよかった」
《Aなんてもう知らないから!バーカバーカ!》
制服を着ていた頃の善逸が脳裏に浮かんだ。
涙目になりながらこちらを指さして大口を開け、謎の高音で罵倒してきたかつての善逸。
…コートを着ている今の善逸は、穏やかに笑い穏やかに謝る、そんな人物だ。
…例えるならば、高校の時の彼はミックスジュース。様々な成分が混ざりあって、子供でも味わえるような甘さになってる、あのジュースみたいな。
比べて、現在の彼はちょっと砂糖が少なめのカフェオレのようだ。洗練された大人の味だけど、確かな甘さは残ってる。
…なんか、変わりすぎて、飲んでる方が舌を痛めそう。
『そ、そうだね』
「うん、ほんと。…そういや、いつもこのバス使ってるの?」
ううん、と答える。善逸は納得したように「いつもこれに乗るんだけど、見たこと無かったからさ」と頷いた。
そうなんだ、と私は月並みの相槌を打つことしか出来ない。
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凛櫻 - 心臓が飛び出そうなぐらいキュンキュンしました…!! え、善逸カッコ良すぎでしょ、、が止まりませんでした!! 素敵な作品をどうもありがとう!! (2020年5月18日 11時) (レス) id: c829f486b3 (このIDを非表示/違反報告)
みるくれーぷあいす(プロフ) - りついちさん» ありがとうございます!鬼滅のキャラを現代でちゃんと動かせているか結構不安だったので、楽しんでいただけてよかったです! (2020年2月19日 22時) (レス) id: 147ef4680d (このIDを非表示/違反報告)
りついち - 完結おめでとうございます!!現パロの純な恋愛物語って新鮮だったので毎回読むのが楽しみで楽しみで…本当に素敵なお話をありがとうございました! (2020年2月19日 21時) (レス) id: 9c40eb9251 (このIDを非表示/違反報告)
みるくれーぷあいす(プロフ) - 羽結さん» ありがとうございます!楽しんで読んでいただけたようで、嬉しい限りです。 (2020年2月17日 10時) (レス) id: 147ef4680d (このIDを非表示/違反報告)
羽結(プロフ) - 素敵な作品ありがとうございました、毎回毎回の更新にドキドキしてました、、本当に素晴らしかったです、お疲れ様でした!!! (2020年2月17日 7時) (レス) id: ca2da2f188 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みるくれーぷあいす | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ykoma1218/
作成日時:2019年12月24日 16時