ダイジェスト ページ30
善逸side
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二言三言、会話を交わす。
Aは驚いた様子ではあるけども、怒ってはいない。
俺はずっと言いたかったことを、ようやく言えた。
「…ごめんね」
大喧嘩して、別れてしまったこと。
あのときは全然言い出せなかったのに、あっさりと謝罪の言葉を述べることができた。そのあっさりさに自分でも驚いているうちに、Aから『いや、あれは若かったというか、私も酷い態度とってたし、気にしてないよ』と返事が返ってきた。
…ほっとして、思わず頬が緩む。
よかった、仲直り出来た。
Aが喧嘩する前のように話してくれるのが嬉しくて、楽しかった。でもその分、時間が経つのは早くて。あっという間に俺が降りるバス停に着いてしまった。
仲直りが高校のときにできてれば、もっとAと一緒にいられたかもしれないのに。
Aは普段このバスを使わないそうだから、もう、会えなくなってしまうかもしれない。
…いや、待てよ。
こちらから、会いに行けばいいんじゃないか。Aの大学へ向かうバスはあと一通りしかない。つまり、明日俺が、Aが普段使っているバスに乗れば、またAに会える可能性がある。
…もう、後悔したくないのだ。
積極的に、自分から動くしかない。せっかく掴みかけたチャンスだ、離すわけがない。
気合を入れて翌日、Aが乗っているはずのバスに乗ってみたものの、なぜかAはいなかった。
…とことんついてない。
お気に入りのイヤホンも行方不明だし。
昨日一瞬会えたのが奇跡だ、と神様に言われている気がして、ため息をついた。
その日は気分が少し落ち込んだままだったのだけれど、講義の帰り、大学の校門にAがいて、全部吹っ飛んだ。
なんでここに?なんの用だろう?
しかし、彼女は先輩に絡まれていた。腕まで握られて、困った顔をしている。
それを見た途端、ぐうっと腹が熱くなったような気がして、俺はその場に飛び出していた。
ガラが悪いことで有名な先輩たちだったから、普段は絶対、注意なんてしないのに。Aが危険だと思うと、怒りの方が勝って行動できた。そんな経験、初めてだった。
先輩の元から離れてAに事情を問うと、俺がなくしていた例のイヤホンを届けに来てくれたという。しかも、朝バスにいなかったのは、俺がいつも使っているバスにわざわざ乗ったからだそうで。
…どんな理由であれ、Aの方から会おうとしてくれたことに、喉の奥がぎゅっと痛くなった。嬉しさと照れが、混ざる。
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凛櫻 - 心臓が飛び出そうなぐらいキュンキュンしました…!! え、善逸カッコ良すぎでしょ、、が止まりませんでした!! 素敵な作品をどうもありがとう!! (2020年5月18日 11時) (レス) id: c829f486b3 (このIDを非表示/違反報告)
みるくれーぷあいす(プロフ) - りついちさん» ありがとうございます!鬼滅のキャラを現代でちゃんと動かせているか結構不安だったので、楽しんでいただけてよかったです! (2020年2月19日 22時) (レス) id: 147ef4680d (このIDを非表示/違反報告)
りついち - 完結おめでとうございます!!現パロの純な恋愛物語って新鮮だったので毎回読むのが楽しみで楽しみで…本当に素敵なお話をありがとうございました! (2020年2月19日 21時) (レス) id: 9c40eb9251 (このIDを非表示/違反報告)
みるくれーぷあいす(プロフ) - 羽結さん» ありがとうございます!楽しんで読んでいただけたようで、嬉しい限りです。 (2020年2月17日 10時) (レス) id: 147ef4680d (このIDを非表示/違反報告)
羽結(プロフ) - 素敵な作品ありがとうございました、毎回毎回の更新にドキドキしてました、、本当に素晴らしかったです、お疲れ様でした!!! (2020年2月17日 7時) (レス) id: ca2da2f188 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みるくれーぷあいす | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ykoma1218/
作成日時:2019年12月24日 16時