手元から周章狼狽 ページ22
Aside
·
なんとか自分を落ちつけて、シートに深く腰かける。
しばらく予告映像が流れたあと、劇場内が暗くなって本編が始まった。
人気のある映画なだけあって、演出も凝ってるし面白い。私の好きなタレントも活躍している。
スクリーンに流れる映像に集中しながら、ポップコーンを掴むべく左手を伸ばした。
…伸ばした左手が、善逸の右手と重なる。
事実を理解する前に反射的に善逸の顔を見ると、スクリーンから溢れる光に照らされた彼も驚いたような表情をしていた。
どうやら善逸もポップコーンを食べようとしていたみたいで、タイミングがかぶってお互いの手がぶつかってしまった、ということ、らしい。
…うわああと叫び出したくなった。さっきまで映画の健康的な刺激でうわずっていた鼓動が、異常なくらい熱っぽく速くなる。そのくせ体は全く動かせなくて、私はただ善逸を見つめることしか出来なくなってしまった。
善逸はびっくりした顔のままぱちぱちと瞬きをしていたが、やがて状況を把握したようで。
ふっと軽く息を吐くと、唇をつりあげて。
笑った。
いつもの大人っぽい笑みとは少し異なり、まるでいたずらっ子のこぼした笑顔のような笑い方に、重なった手と頭がじんじんほてっていく。
しかも、スクリーンからの光で彼の笑顔が中途半端に照らされるものだから。
…なんかちょっと、色っぽかった。
そんなことを考えた自分が余計に恥ずかしくなって、ぱくぱくと口を動かす。
ふいにスクリーンからの光が弱まって、場面が変わったのがわかる。
それと同時に私の固まっていた体にようやく意思が通って、手を動かすことが出来た。
同時に善逸も私の手から手を離す。ごめん、と彼の口が動いた。私は何度か頷いて、大丈夫だということを伝える。
結局ポップコーンは食べないまま、私はスクリーンに向き直った。
スクリーンの中では、なんだか怪しげな雰囲気が漂っていて、主役がなにか意味ありげなことを呟いていて。
きっと重要なシーンであるはずなのに、全然頭に入ってこなかった。
さっきの善逸の笑みと、手に伝わった感触が離れない。瞬きをしてかき消そうとしても、消えない。
それどころか。
もう少し、善逸のあの顔を見ていたかった、とか。手がぶつかったままでいたかった、とか。
私の頭は、とんでもないことまで考え始めてしまっていた。やばいやばいやばい、何考えてんの。落ちつけ。
…私の頭の暴走がおさまる頃には、映画は佳境に入っていて。かなり後悔した。
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凛櫻 - 心臓が飛び出そうなぐらいキュンキュンしました…！！ え、善逸カッコ良すぎでしょ、、が止まりませんでした！！ 素敵な作品をどうもありがとう！！ (2020年5月18日 11時) (
レス) id: c829f486b3 (このIDを非表示/違反報告)
みるくれーぷあいす(プロフ) - りついちさん» ありがとうございます！鬼滅のキャラを現代でちゃんと動かせているか結構不安だったので、楽しんでいただけてよかったです！ (2020年2月19日 22時) (レス) id: 147ef4680d (このIDを非表示/違反報告)
りついち - 完結おめでとうございます！！現パロの純な恋愛物語って新鮮だったので毎回読むのが楽しみで楽しみで…本当に素敵なお話をありがとうございました！ (2020年2月19日 21時) (レス) id: 9c40eb9251 (このIDを非表示/違反報告)
みるくれーぷあいす(プロフ) - 羽結さん» ありがとうございます！楽しんで読んでいただけたようで、嬉しい限りです。 (2020年2月17日 10時) (レス) id: 147ef4680d (このIDを非表示/違反報告)
羽結(プロフ) - 素敵な作品ありがとうございました、毎回毎回の更新にドキドキしてました、、本当に素晴らしかったです、お疲れ様でした！！！ (2020年2月17日 7時) (レス) id: ca2da2f188 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：みるくれーぷあいす | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ykoma1218/
作成日時：2019年12月24日 16時
