できる大人 ページ21
Aside
·
待ち合わせ場所には、既に善逸がいた。
『あ、ごめん、待った?』
「ううん。いまさっき来たとこ」
善逸はにこりと笑って、じゃあ行こうか、と歩き始めた。
──今日は善逸と映画を見ようと約束した日、当日だ。いつもより髪の毛を念入りにセットして、服装に気を配って、慎重にメイクして。少しでも綺麗に見えるように。
善逸はあのグレーのマフラーをしていて、彼のマフラーを借りた時のことを思い出してしまい、私はちょっと恥ずかしくなった。
今日見る映画は、流行っているアクションミステリー物だ。有名な作家の本が原作になっているそうで、善逸はその作家のファンだと言っていた。私の気に入っているタレントも映画に出演しているそうで。善逸と出かけるのももちろん、私は映画の内容もかなり楽しみにしている。
映画館の中に入って、チケットを買うためにカウンターに向かおうとした。
が、善逸にぐいと袖を引っ張られる。
反射的に『わっ』と声が出てしまう。少しはやる程度だった心臓のテンポが、一気に跳ね上がったのが自分でわかった。
「混んでたら困るし、一応席予約してきたんだ。だからこっちの発券機でチケット買うよ」
『そうなの?わざわざありがとう』
確かに人気の映画だし、助かる。
善逸は「ううん、俺から誘ったしね」と当たり前のように笑って発券機の方に歩いていった。
…行動まで大人っぽくなりやがって、と呟いてみる。なんだか善逸が、すごいできる感じの大人に見えた。
「飲み物とか買う?ちなみにポップコーン食べる派?」
『あ、買おうかな。ポップコーンも』
チケットを発券したあと、ジュースやらポップコーンやらを買っていたら、ちょうどスクリーンが開場したとアナウンスがかかった。ポップコーンののったトレーをかかえてくれている善逸のかわりにチケットを係の人に渡して入場する。
…隣に立って会話を交わしながら歩いていたら、なんだか本物のカップルのような気さえしてきてしまった。高校の時の感覚も蘇る。
善逸と一緒にいるだけで、ここまで浮き足立つなんて。むずむずした気分になる。
「ここかな、シート」
善逸が予約してくれていたのは、真ん中より少し後ろくらいの位置にある見やすい席だった。やはりそれなりに劇場内は混んでいる。改めて善逸に礼を述べて、私たちは並んで腰かけた。
すぐ横に善逸の顔がある。瞬きする度に彼の睫毛が上下して、瞳が色づいて。
…しばらく目が離せなくなってしまった。
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凛櫻 - 心臓が飛び出そうなぐらいキュンキュンしました…!! え、善逸カッコ良すぎでしょ、、が止まりませんでした!! 素敵な作品をどうもありがとう!! (2020年5月18日 11時) (レス) id: c829f486b3 (このIDを非表示/違反報告)
みるくれーぷあいす(プロフ) - りついちさん» ありがとうございます!鬼滅のキャラを現代でちゃんと動かせているか結構不安だったので、楽しんでいただけてよかったです! (2020年2月19日 22時) (レス) id: 147ef4680d (このIDを非表示/違反報告)
りついち - 完結おめでとうございます!!現パロの純な恋愛物語って新鮮だったので毎回読むのが楽しみで楽しみで…本当に素敵なお話をありがとうございました! (2020年2月19日 21時) (レス) id: 9c40eb9251 (このIDを非表示/違反報告)
みるくれーぷあいす(プロフ) - 羽結さん» ありがとうございます!楽しんで読んでいただけたようで、嬉しい限りです。 (2020年2月17日 10時) (レス) id: 147ef4680d (このIDを非表示/違反報告)
羽結(プロフ) - 素敵な作品ありがとうございました、毎回毎回の更新にドキドキしてました、、本当に素晴らしかったです、お疲れ様でした!!! (2020年2月17日 7時) (レス) id: ca2da2f188 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みるくれーぷあいす | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ykoma1218/
作成日時:2019年12月24日 16時