【鬼滅の刃】元彼と、もういちど【我妻善逸】

神はサイコロを振らない ページ3

Aside
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…なんとかギリギリ、講義には間に合いそうだ。私はほっと息をついた。
乗り込んだバスの車内は暖房が効いている。
後ろの方の二人がけの席の窓側に腰を下ろしたところで、バスが発車した。

大学生活において、朝起きたら遅刻ギリギリ、というのは割とよくある話だ。同級生が講義に滑り込んできたりして「遅刻か」と笑うことなんて、よくある。
…自分が遅刻ギリギリの状況になると、笑っていられないのだが。

目覚まし時計をみて飛び起き、慌てて支度を整えて、一人暮らしをしているアパートの最寄り駅から駆け込み乗車。
それでも間に合わないかもしれない、と慌ててネットで調べ、いつも降りない駅で降りていつも乗らないバスに乗った。このバスに乗った方が早く着くらしい。今度からこの行き方にしようかな。

冬も本格化して、かなり寒くなってきた。
そろそろマフラーを出した方がいいかも。
そんなことを考える余裕もでてきた。

バス特有の揺れと、窓から差し込むぽかぽかとした陽の光。
だんだん瞼が下がっていって、意識が沈んだり浮かんだり。
心地よいまどろみに身を任せる。


ふっと目が覚めたのは、隣に誰か座ったのがわかったからだ。
いつの間にかバスの車内には人が増えていた。
寝顔見られてないかな、座ってきた時に起きたから大丈夫か。

ちらりと隣に座った人に目をやって──


『え』

思わず声が出てしまった。
…だって、だってだって。

「ん？…あれ」

隣の人物も視線に気がついたようで、私を見てきた。

──特徴的な金髪。
──垂れた眉毛と、少しの隈。
──そして、くるくると細かく深さが変化する、万華鏡のような黄金の瞳。


…紛れもない。
元彼、我妻善逸である。

私の知る頃から少し髪の毛が伸びただろうか。心無しか顔の輪郭からも幼さが消え、目の色の深みが増した気がする。

『えっと。久しぶり…？』

なんと声をかけていいかわからなかったのは、私と彼の別れ方がアレだったからだ。
端的に表すならば、互いにブチ切れて怒鳴りあって喧嘩別れ。そのまま卒業して連絡も取らず、今に至る。
…あの頃は若かった、とでも形容しよう。

これはわあわあ騒ぎ立てられるやつだろうか。嘘でしょと喚くのか、まだ怒ってるからなと叫ばれるのか。
高校時代の彼の暴走っぷりが頭に浮かんだ。

…まあ、きっと大袈裟に反応するに違いないという私の予想は、打ち砕かれることになる。






「A？久しぶり。元気にしてた？」

…ん？
…誰？

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