【鬼滅の刃】元彼と、もういちど【我妻善逸】

まだ、隣に ページ17

Aside
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聞こえたいた音楽が切り替わる。
次に流れてきた曲は、クリスマスをテーマにしているようで。

「もう、クリスマスかぁ」

善逸がぽつりと呟いた。
クリスマスはあと二週間近くまで迫ってきていて、街中の装飾はクリスマス一色だ。つい最近までハロウィンで盛り上がっていた気がするのに、時が経つのは早い。

善逸が身じろきする度に、つながっているイヤホンが少し揺れる。その度に、私の心臓も跳ねる。
…付き合っていた時も、イヤホンを片側ずつ半分こなんてやったことなかった。そういえば、手を繋ぐのだって、ほとんどしてなかったかも。存外善逸は照れ屋で、私も踏み切る勇気はなくて。


「ねぇ、Aって、サンタとか信じてた？」

『あ、うーん。小学生の時は信じてたかも。善逸は？』

善逸の問いかけに、慌てて彼の顔を見る。思った以上に顔が近くて、喉の奥がぎゅっと詰まったような感覚に陥った。

「小五のときに兄貴にバラされた」

『…すごいな、それは』

サンタの正体をばらすお兄さんとは一体。
何かを思い出したのだろう、善逸はふは、と少し声を出して笑った。


まだ、善逸の隣にいたいのに。
バスは、善逸の通っている大学に着いてしまう。
善逸は「降りなきゃ」と言って、ボタンを押した。
そしてそのまま、手をするりと私の耳に伸ばす。
──え、

「気に入ってくれてよかった。ほかの曲も聞いてみてよ」

善逸は私が片耳にはめたままだったイヤホンをそっと外した。彼の手が微かに耳をくすぐる。

『あ、うん』

…どっどっと心臓が急いで血液を送り出している。死ぬかと思った。
無意識に手をさっき善逸が触った方の耳に持っていってしまう。


「…俺、今まで一人で通学してたからさ。こんなにあっという間に着いちゃうのは久しぶりかも。いつもありがと」

え、と私が彼の言葉に反応した時には、もう既に善逸は席を立って、バスの降り口に向かっていて。
私は呆けたまま、彼の背を見送った。

《いつもありがと》

優しくあたたかい先程の囁きが、再び耳元に甦って。今度は両耳を手で押さえてしまった。


ずるすぎる。
なんでこんな、こんな。
善逸に会う度に思いっきり心を揺らされて、ドキドキして。でもそれを心地いいと思っている自分が、どこかにいて。
恋って、こんなんだったっけ。こんなに熱っぽいもんだったっけ。

…なんで私、善逸と別れちゃったんだろう。
こんなに、心奪われている相手なのに。一緒にいたいって、考えちゃう相手なのに。

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