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Aside
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__ここは夜霧峠とよばれる場所に建つ、とあるホテル。
ホテルのパーティー会場で開かれている婚活パーティーに、私は参加している。
私の目の前に座る男の人__坂田銀時さん。
銀髪の天然パーマが特徴的だが、気さくで話しやすい。今までの相手でいちばん良い人ではないだろうか。
ようやく運命の人と巡り会えたかもしれない、なんて喜びに胸を躍らせていたその時。
『あっ』
うっかり手が滑り、水の入ったコップを倒してしまった。自分の服と、テーブルに水のシミが広がる。
うわあ、最悪、と私は思わず呟きを漏らした。
「良かったらこれ使いなよ」
坂田さんはすっと青いハンカチを差し出してきた。気配りもできるじゃないか。
私は『ありがとうございます』と言い、ハンカチを受けとって__今度は違うことに『あ…』と声を漏らした。
頭の中に浮かぶ映像。
その中の坂田さんは、パチンコ店にいた。
パチンコのスロット台に向き合って、ブツブツ何かを言っている。
《ちっ、ハズレかよ。三万つぎ込んだのに…》
場面は変わり、とっちらかった部屋。
どうやら坂田さんの家らしい、アパートだろう。
《銀時!とっとと家賃払いな、どんだけ滞納してると思ってんだい!》
《うるせーババア、こちとら負けが続いてんだよちくしょー!》
大家らしき女性に怒鳴り返す坂田さん。苛立った様子で立ち上がり、冷蔵庫からいちごオレをとりだし、パックのままがぶ飲みを始めた。
「…大丈夫?」
現実の坂田さんの声に、はっと引き戻された。
『あ、はい、すみません』
急いで私は水を拭き、ハンカチを坂田さんに返す。
さっき頭に浮かんだ映像で、彼への期待はすっかり砕け散った。パチンコに走って家賃滞納、やけ酒ならぬやけいちごオレ。
…どうやら、坂田さんはダメそうだ。
私は愛想笑いをうかべ、彼に向き直った。
***
私には、相手の持ち物に触れると、その相手の過去がわかるという超能力がある。
サイコメトリーとも呼ばれるそれは、私が生まれた時から常に発動されていた。
だから、さっきの坂田さんのように、その人がどんな人か一瞬で見抜けてしまうのだ。
今回の婚活パーティーで、良いと思えた人は結局いなかった。帰ろう。私は駐車場に向かい、自分の車を出すことにする。
ドアを開け、荷物を助手席に置く。運転席に座り、エンジンをつける。
アクセルを踏み、ホテルの駐車場を出る。
車は快調な走りを見せていた、
はずだったのだが。
『うわっ、あれ?』
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みるくれーぷあいす(プロフ) - ちぃなさん» ありがとうございます!これからも楽しんでいただけると嬉しいです。 (2019年10月30日 16時) (レス) id: 147ef4680d (このIDを非表示/違反報告)
ちぃな - ホラー好きなので嬉しいです!更新楽しみにしてます。 (2019年10月29日 14時) (レス) id: 43ae00df60 (このIDを非表示/違反報告)
みるくれーぷあいす(プロフ) - 綾葉メグさん» ありがとうございます!マイペースな更新ですが、これからもよろしくお願いします。 (2019年10月27日 17時) (レス) id: 147ef4680d (このIDを非表示/違反報告)
綾葉メグ(プロフ) - 面白いです!更新楽しみにしてます! (2019年10月27日 15時) (レス) id: fe3feae032 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みるくれーぷあいす | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ykoma1218/
作成日時:2019年10月15日 1時