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銀時side
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最後に身だしなみを整えようと、鏡に向かって顔を上げた。
「……はっ?」
鏡に、イマキヨさんが映っていた。
な、なんでここに?慌てて背後を振り返るも誰もいない。鏡を見ても、自分が写っているだけだった。
なんだったんだ、今の。見間違いか?いや──
俺は首を振る。面接の前、そんなことを考えている暇はない。とにかく、内定を貰うことを優先すべきだ。
さっきのイマキヨさんは一度頭から追い出して、面接会場へと向かった。
***
「御社を志望致しました理由は…」
面接官六人対、俺一人。
何度も頭の中で反芻した志望動機を喋る。
落ち着いて、ゆっくり話そうと努める。さっきから手が震えそうだ。緊張、しているらしい。
俺は平常心を取り戻そうと、面接官らの背後の窓から、外の風景と空を眺めた。落ち着け。
よし、と心の中で気合を入れ直し、視線を面接官に戻して──
「っ、うわああ!」
面接官は、男三人、女三人だったはずなのに。
いつの間にか、全員が黒頭巾を被った──イマキヨさんに、なっていた。
なんでだよ、どういうことだよ。信じられなくなって、俺は目を見開く。
「…どうかなさいましたか?」
落ち着いた女の声に、はっと視線を戻した。
イマキヨさんは、いない。六人の面接官が、不審そうに俺のことを見ている。
…どういう、ことだよ。
「い、いえ」
背中を冷たい汗が伝った。
ああ、これは、落ちた。ふざけんな。
なんとか笑顔を取り繕っていくつかの質問に答え、部屋を出るよう促される。
絶望的な気分で一礼して退室した。
「クソ、意味わかんねー」
イマキヨさんがなんであんなところに。しかも面接の邪魔をして。あの黒頭巾の不気味な姿に、恐怖と怒りがまじる。
「…つーか、ここどこだ?」
ビルの中を感情に任せて歩き回っていたら、よく分からない、階段の近くまで来てしまった。ロビーはどこだろう。一階まで降りようか。
階段に一歩を踏み出した、その瞬間。
踊り場に、イマキヨさんが現れた。
一、二、三、四、五…数えきれない程の大群で!
「はあ!?ちょ、」
階段を昇ってきたのだろうか。
先頭に立っていたイマキヨさんは、無言で俺の方めがけて歩いてくる。
後ろの奴らも続く。
…不気味な光景だった。
「な、なんなんだよ!来るな!」
俺は思わず後ずさる。イマキヨさんたちはさらに近づく。
ああ、まずい、と直感的に思った。
とにかく逃げようと、俺は階段を駆け上がり、屋上に続くドアを開けた。
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みるくれーぷあいす(プロフ) - ちぃなさん» ありがとうございます!これからも楽しんでいただけると嬉しいです。 (2019年10月30日 16時) (レス) id: 147ef4680d (このIDを非表示/違反報告)
ちぃな - ホラー好きなので嬉しいです!更新楽しみにしてます。 (2019年10月29日 14時) (レス) id: 43ae00df60 (このIDを非表示/違反報告)
みるくれーぷあいす(プロフ) - 綾葉メグさん» ありがとうございます!マイペースな更新ですが、これからもよろしくお願いします。 (2019年10月27日 17時) (レス) id: 147ef4680d (このIDを非表示/違反報告)
綾葉メグ(プロフ) - 面白いです!更新楽しみにしてます! (2019年10月27日 15時) (レス) id: fe3feae032 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みるくれーぷあいす | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ykoma1218/
作成日時:2019年10月15日 1時