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土方side
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入口にさしかかれば、お出ましです、とばかりにボールが足元にやってくる。
無意識に、ボールに手が伸びる。
近藤勲は、石段で転倒して、亡くなった。
ミツバの泣く声を思い出す。
そんなの決まってるさ。家族だよ。
近藤さんの真っ直ぐな声を思い出す。
石段。鉄骨。強盗。火事。
今までの彼の死を思い出す。
《大切にしてやれよ》
…ボールに伸ばした手が、止まる。
もう、無理だ。
俺は近藤さんを、助けられない。
悪い。本当に、すまない。
地面に膝をつく。ぽたり、とあたたかい雫が目元から落ちる。
助けたかった。助けられない。
…俺には、出来ない。
《トシは死なないだろ？》
ボールは俺の眼前で、ゆっくりと消えていく──
***
「もうすぐ七回忌になるのね」
公園でキャッチボールを交わす二人の少年を見ながら、ミツバが静かに呟いた。
近藤さんが亡くなって、七回忌。
「そうだな」
俺は思い出す。
近藤さんを助けるため、時間を遡ったことを。
彼を助けなかったというあの判断が、正しいのかはわからない。
でも、彼の一番大事なモノは、今も生きている。
重くなった空気を払拭しようとしたのか、ミツバは公園外にある自販機へと歩いていった。
少年達は笑ってボールを投げあっている。
傾きつつある日の光が、彼らを優しく照らす。
「遅くなっちゃって、ごめんなさい」
ミツバはお茶を差し出してきた。
「まだ五分も経っていないだろ」
そうよね、と答えるミツバの声は暗い。
不思議に思って、彼女の顔を見やる。
「…顔色悪いぞ、疲れてるのか？」
ミツバは体が強い訳では無い。昔から体調を崩しがちだった。
ミツバは、ううん、と首を振って、下を向く。やっぱり、疲れているのではないだろうか。
「そろそろ帰るか」
「十四郎さん」
ミツバは顔を上げ、俺を見つめた。
まるで縋り付くかのように、必死そうに。
「私が今日死ぬってわかったら、十四郎さんは、どうする？」
…どろり、と胸の中で何かが動いた。
心臓が、早鐘を打つ。
「…ごめんなさい、聞いてみただけよ」
ミツバは笑う。無理しているのが、わかる。
《もし俺が今日死ぬってわかったら、近藤さんはどうする？》
…ああ、そうか。俺は──
「もういい、ミツバ」
今ならわかる。近藤さんの気持ちも、ミツバの気持ちも。
…俺のことは、もういい。もう、苦しまなくて、いいから。
「…お前は、幸せになってくれ」
涙を流す彼女に、そっと手を伸ばした。
END
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みるくれーぷあいす(プロフ) - ちぃなさん» ありがとうございます！これからも楽しんでいただけると嬉しいです。 (2019年10月30日 16時) (
レス) id: 147ef4680d (このIDを非表示/違反報告)
ちぃな - ホラー好きなので嬉しいです！更新楽しみにしてます。 (2019年10月29日 14時) (レス) id: 43ae00df60 (このIDを非表示/違反報告)
みるくれーぷあいす(プロフ) - 綾葉メグさん» ありがとうございます！マイペースな更新ですが、これからもよろしくお願いします。 (2019年10月27日 17時) (レス) id: 147ef4680d (このIDを非表示/違反報告)
綾葉メグ(プロフ) - 面白いです！更新楽しみにしてます！ (2019年10月27日 15時) (レス) id: fe3feae032 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：みるくれーぷあいす | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ykoma1218/
作成日時：2019年10月15日 1時
