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土方side
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ニュースでは、この後近藤さんの家に強盗が押し入るんだったか。
近藤さんの妹まで死んでしまったのだ。
助けなくては、と俺は近藤さんの家にUターンする。
時間を遡るのはこれが3度目。
今まで、何度やっても近藤さんは死んでしまっていた。死という運命は変えられないのか、と不安がもたげるが、すぐに振り払う。
絶対、救う。それだけを考えろ。
夜、八時。
近藤さんの酒屋の向かいのベンチに座り、時計を見た。そろそろだ。
バッ、となにかが酒屋の前を走っていく。
やけに黒ずくめの格好をした人だ。俺は反射的に顔を上げた。そいつは近藤さんの家の塀を乗り越えようと、足をかけている。
…強盗だ!
「泥棒!」
俺は大声を上げた。近藤さんの家に入ろうとしていたそいつは、ぎょっとしたように足を下ろす。暗いおかげで、向こうから俺は見えていないらしい。泥棒は慌てたように走り、近藤さんの家から去っていく。
…なんとかおい払えた。体から力が抜ける。
よし、こうなったら朝までこのベンチで近藤さんの家を見張ってやる。もしかしたらあの泥棒が戻ってくるかもしれない。
決意をかため、俺はベンチに座り直す。
と、決意したはいいものの、いつの間にか眠ってしまっていたらしい。やべ、と呟いて目を開け、ベンチから身を起こす。
何やら騒ぎが起きているらしい。人々の声で目が覚めたようだ。
「…な」
…騒ぎの元凶──目の前の光景を見て、絶句した。
野次馬がある一点に集中している。消防車のサイレンが鳴り響いている。焦げ臭い匂いが鼻をつく。
その一点は、近藤さんの家で。
…彼の家は、黒煙を上げながら、燃えていた。
***
《深夜の火災、一家五人全員焼死》
その記事は、翌朝の新聞の一面を大きく飾っていた。
全員、焼死。
俺は新聞を抱えたまま、ふらふらとあの公園に向かっている。
太陽が、強く俺を照らしていた。
最早なにを考えることも無く、公園の入口に差しかかる。
当然のように、ボールが転がってくる。
…これをとれば、きっとまた昨日に戻れる。
だが、彼は──
迷った末、結局ボールを拾い上げた。
「トシ、何やってるんだ?こっちこっち」
「…」
答える気力もない。俺は黙って近藤さんにボールを投げ返す。
「トシ?顔色悪いな、今にも死にそうだぞ」
四回目で初めてかけられた言葉。心配そうな彼の表情に、俺は思わず聞いていた。
「…もし俺が今日死ぬってわかったら、近藤さんはどうする?」
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みるくれーぷあいす(プロフ) - ちぃなさん» ありがとうございます!これからも楽しんでいただけると嬉しいです。 (2019年10月30日 16時) (レス) id: 147ef4680d (このIDを非表示/違反報告)
ちぃな - ホラー好きなので嬉しいです!更新楽しみにしてます。 (2019年10月29日 14時) (レス) id: 43ae00df60 (このIDを非表示/違反報告)
みるくれーぷあいす(プロフ) - 綾葉メグさん» ありがとうございます!マイペースな更新ですが、これからもよろしくお願いします。 (2019年10月27日 17時) (レス) id: 147ef4680d (このIDを非表示/違反報告)
綾葉メグ(プロフ) - 面白いです!更新楽しみにしてます! (2019年10月27日 15時) (レス) id: fe3feae032 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みるくれーぷあいす | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ykoma1218/
作成日時:2019年10月15日 1時