検索窓
今日:2 hit、昨日:22 hit、合計:14,734 hit

5 ページ22

土方side
·

ニュースでは、この後近藤さんの家に強盗が押し入るんだったか。
近藤さんの妹まで死んでしまったのだ。
助けなくては、と俺は近藤さんの家にUターンする。

時間を遡るのはこれが3度目。
今まで、何度やっても近藤さんは死んでしまっていた。死という運命は変えられないのか、と不安がもたげるが、すぐに振り払う。
絶対、救う。それだけを考えろ。


夜、八時。
近藤さんの酒屋の向かいのベンチに座り、時計を見た。そろそろだ。

バッ、となにかが酒屋の前を走っていく。
やけに黒ずくめの格好をした人だ。俺は反射的に顔を上げた。そいつは近藤さんの家の塀を乗り越えようと、足をかけている。

…強盗だ!

「泥棒!」

俺は大声を上げた。近藤さんの家に入ろうとしていたそいつは、ぎょっとしたように足を下ろす。暗いおかげで、向こうから俺は見えていないらしい。泥棒は慌てたように走り、近藤さんの家から去っていく。
…なんとかおい払えた。体から力が抜ける。
よし、こうなったら朝までこのベンチで近藤さんの家を見張ってやる。もしかしたらあの泥棒が戻ってくるかもしれない。
決意をかため、俺はベンチに座り直す。

と、決意したはいいものの、いつの間にか眠ってしまっていたらしい。やべ、と呟いて目を開け、ベンチから身を起こす。
何やら騒ぎが起きているらしい。人々の声で目が覚めたようだ。

「…な」

…騒ぎの元凶──目の前の光景を見て、絶句した。
野次馬がある一点に集中している。消防車のサイレンが鳴り響いている。焦げ臭い匂いが鼻をつく。

その一点は、近藤さんの家で。
…彼の家は、黒煙を上げながら、燃えていた。


***

《深夜の火災、一家五人全員焼死》

その記事は、翌朝の新聞の一面を大きく飾っていた。
全員、焼死。
俺は新聞を抱えたまま、ふらふらとあの公園に向かっている。
太陽が、強く俺を照らしていた。

最早なにを考えることも無く、公園の入口に差しかかる。
当然のように、ボールが転がってくる。

…これをとれば、きっとまた昨日に戻れる。
だが、彼は──

迷った末、結局ボールを拾い上げた。

「トシ、何やってるんだ?こっちこっち」

「…」

答える気力もない。俺は黙って近藤さんにボールを投げ返す。

「トシ?顔色悪いな、今にも死にそうだぞ」

四回目で初めてかけられた言葉。心配そうな彼の表情に、俺は思わず聞いていた。


「…もし俺が今日死ぬってわかったら、近藤さんはどうする?」

6→←4



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.6/10 (25 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
23人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

みるくれーぷあいす(プロフ) - ちぃなさん» ありがとうございます!これからも楽しんでいただけると嬉しいです。 (2019年10月30日 16時) (レス) id: 147ef4680d (このIDを非表示/違反報告)
ちぃな - ホラー好きなので嬉しいです!更新楽しみにしてます。 (2019年10月29日 14時) (レス) id: 43ae00df60 (このIDを非表示/違反報告)
みるくれーぷあいす(プロフ) - 綾葉メグさん» ありがとうございます!マイペースな更新ですが、これからもよろしくお願いします。 (2019年10月27日 17時) (レス) id: 147ef4680d (このIDを非表示/違反報告)
綾葉メグ(プロフ) - 面白いです!更新楽しみにしてます! (2019年10月27日 15時) (レス) id: fe3feae032 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:みるくれーぷあいす | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ykoma1218/  
作成日時:2019年10月15日 1時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。