キ ョ リ 3 ページ8
Aside
·
「夜の七時半」
『へ、ええええええぇぇぇ!やっば!何時間寝てたんだ!?』
確かに周りは真っ暗だし、開けっ放しの窓から入る風は冷たいし、夜だ。
「俺がさっきここに戻ってきたから良かったけどよォ、校門しまってたらどうしてたんだ」
『なら早く起こしてくださいよ』
先生はようやく私から身を離した。
あまりのドキドキ具合に自分でも驚く。顔に出てないことを祈るしかない。
「だってお前の寝顔おもしれーんだもん」
『人の顔を面白いって、最低ですよ…』
今度は寝顔を見られた恥ずかしさで死にそうだ。何しやがるんだせんせーのばーかばーか!
「早く荷物片付けろ。んで帰れ」
『は、はいぃぃ…』
部活にも属していない私がこの時間まで学校に残るのは初めてで、あまりの暗さにちょっと怖くなる。いや、かなり怖くなる。
机の上の物を全部リュックに閉まって、椅子から立ち上がった。
やばい、怖い。そういえば私、怪談とかすごく苦手だった。夜の学校とかもう怪談の舞台じゃん。さっきまでは先生にあんなに心臓がうるさかったのに、今は完全に恐怖でドキドキだ。
『じゃ、じゃあ、さようなら、せんせ__』
「…送ってやろっか?」
ん?送る?
「お前絶対ビビってんだろ」
『HAHAHAナニイッテルンダHAHA』
「認めろや!外も暗いし、お前電車で来てんだろ?最寄りの駅まで送ってやる」
えっ、と顔を上げる。
先生が駅まで私を送ってくれる!?なにそれ最高じゃないか。恐怖が一気に薄らいでいく。
あ、でも私失恋してるんだ。この高なりにも意味ないじゃん。胸のどこかがズキンと音を出す。我ながら忙しい。
『いいんですか?ありがとうございます』
「おう」
私と先生は連れ立って教室を出る。
そういう結構優しくて世話焼きなとこがさらに好きになっちゃうよ、やめてよ。
もう、銀八先生の馬鹿野郎、と何度も胸中で呟いた。
***
他愛もない話をした。クラスメイトのことも、先生達のことも、私のことも、銀八先生のことも。外は暗くてネオンがぴかぴかで、照らされた先生を見る度に胸が苦しくなって、暖かかった。
高校から駅までは15分程度。
こんなに短い15分は、初めてだった。
「ここまででいいか?」
『はい、ほんと助かりました!珍しく役に立ってますね』
「ほんとひどいわコイツ」
あはは、なんて笑い合う。
神様どうか、と願う。次の1秒が来ないように封じ込めてよ、と祈る。
駅の改札にたどり着いてしまった。
もうお別れだった。
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みるくれーぷあいす(プロフ) - 鈴神さん» 嬉しすぎるコメントありがとうございます!これからも鈴神さんにそう思っていただけるよう頑張ります!よろしくお願いします。 (2019年8月24日 13時) (レス) id: 0de76de774 (このIDを非表示/違反報告)
鈴神(プロフ) - こんにちは!突然ごめんなさい(汗 作品読ませて頂いたんですが、一人一人の気持ちがとても丁寧に書かれていて一つ一つの話にすごく惹かれました!!ほんとに素敵なお話ばかりなのでこれからも応援してます!頑張ってください!! (2019年8月24日 1時) (レス) id: de3968cf62 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みるくれーぷあいす | 作成日時:2019年8月13日 1時