キ ョ リ 2 ページ7
Aside
·
『…まじ?』
え、嘘でしょ、好きな人?
さっきまで高鳴っていた胸が急激に大人しくなって、代わりに全身から血の気がひいていく、気がした。
『…え、先生に好きな人なんているの?』
かろうじて出せた言葉は何とか形を保っている。
「俺を人外生物みたいに言うな」
え、うそ、そんなのあり?だってだって、好きな人に好きな人がいたって、それってもう、【失恋】じゃないですか。
さっきまで甘かったはずの空気が、まるで刺すように冷たく感じられた。
『先生っ、その好きな人って___』
ぴんぽんぱんぽーん。
坂田銀八先生、坂田銀八先生、至急職員室までお越しください。
唐突に入った放送が、私の言葉を断ち切る。
「あ、呼び出しじゃん。俺なんかやったかな」
『…どうぞ怒られて来てください』
何も意識しないでも人と会話はできるんだな。先生の声ですら耳から耳へと通り過ぎていく。
「うわっ、サイテー。まあいいや、今日はその問題解き終わったら帰っていいぞ」
待って。待ってよ先生。
そんな自己中で意味もない引き止めは、私の喉のに引っかかって消える。
銀八先生の温度が消えていく。離れていく。
その様子を、私はただ呆然と見つめていた。
「…あ」
教室を出る寸前に、先生は振り返った。
「サボんなよ」
『サボりませんよ先生とは違うもん』
「へーどの先生のことだろう。
___まぁ、頑張って、A」
『……』
さすがに勝手に動いていた私の口も止まった。
先生はもう教室を出ていって、私一人だった。
『…ずるいよ』
先生、ずるいですよ。卑怯ですよ。
あの状況で名前呼ぶとか、頭おかしいんですか。
ほら、失恋は確定したのに、またドキドキしてる。喉の奥がぎゅうっとしまる。
『…はは、酷いって』
胸が苦しい。息を吸う度に痛い。
開いていた教科書の文字がかすれていく。目が熱くなっていく。
思わず目をつぶる。瞼に浮かぶ鮮やかな赤色。
『せきにんとれよ、教師のくせに』
いちばん馬鹿なのは、私だけど。
***
あれ、寝ちゃった。
いつの間にか机に突っ伏していた。今何時なんだろう。そう思って顔を上げる。
『………………!!!!』
目の前に、先生がいた。
え、なんで?という問いが意味もなく口から出た。
「なんで?じゃねーよ。もう校門閉まるぞ」
近い、近い近い近い。温度がさっきよりもずっと近くて、先生の目が近くて、とにかく近い。
『い、今、何時ですか』
ようやく言葉を操って質問できた。
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みるくれーぷあいす(プロフ) - 鈴神さん» 嬉しすぎるコメントありがとうございます!これからも鈴神さんにそう思っていただけるよう頑張ります!よろしくお願いします。 (2019年8月24日 13時) (レス) id: 0de76de774 (このIDを非表示/違反報告)
鈴神(プロフ) - こんにちは!突然ごめんなさい(汗 作品読ませて頂いたんですが、一人一人の気持ちがとても丁寧に書かれていて一つ一つの話にすごく惹かれました!!ほんとに素敵なお話ばかりなのでこれからも応援してます!頑張ってください!! (2019年8月24日 1時) (レス) id: de3968cf62 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みるくれーぷあいす | 作成日時:2019年8月13日 1時