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チ カ ラ 《坂田銀時》 ページ22

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チカラ
坂田銀時

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☆銀さんは学生設定です。


Aside
·

赤と白に彩られた体育館。並べられたパイプ椅子。ステージ上部に飾られた【卒業証書授与式】の文字。流れるピアノ伴奏。近くから聞こえる歌声。
そして、歌うみんなの頭の上に浮かび、変わっていく数字。1と2と3と4。
いち、に、さん、し。
いち、に、さん、し。
人によってバラバラのテンポで四拍子を刻む半透明の数字達。
隣に立って口を動かす坂田銀時をちらりとみると、いつもとまるで変わらないゆったりとしたスピードで四拍子を刻んでいた。
自分で自分の数字は見えないけれど、きっと私のテンポも同じくらいだろう。
いち、に、さん、し。
いち、に、さん、し。

私には、特別な力、いわば超能力がある。
それは、人の心臓の動く速さが目に見える力だ。


***

生まれた時から数字達はいた。
お母さんもお父さんも頭にスマホサイズくらいの数字を持っていて、だんだん速くなったり、遅くなったり、安定していたり。
いくら数字を指さしてみても、何も無いよと親は言うばかり。これは自分にしか見えない、と気づいたのは幼稚園の時だった。
試しに突然お母さんの前で逆立ちをしてみたらその数字のスピードは早まり、お父さんの肩を叩いたらゆっくりと安定。
なんだろう、なんの速さだろうと考え続け、これは心臓の速さじゃないかと仮説を立てたのは小学三年生の頃。
実際に当時のクラスメイトにひたすらジャンプをしてもらい、頭の数字が早まったのを確認、直接心臓の速さを口に出して言ってもらうと、《1234》の数字と「どく、どく、どく、どく」の言葉は全く同じタイミングだった。
これだ、と確信。能力は衰えることなく、今もみんなの頭の上に浮かんでいる。


「卒業生、退場」

そう言う教務主任の頭上のテンポはさっきからずっと同じ。絶対退屈してるんだと思う。
タイミングを合わせて起立、回れ右。拍手に包まれながら退場。
前を歩くふわふわ銀髪はあくびをするかのように口に手をやった。おい、怒られるぞ。


「なあ、今も見えてんの?」

教室に戻ると、坂田に声をかけられた。

『うん、見えてるよ。みんなスピードが速くてびっくり』

目を赤く腫らした生徒も多い。クラスメイト達のテンポは式の最中より速い人が多い。きっとこの学校とのお別れへの寂しさと緊張が増しているんだと思う。

「へー、やっぱそうなんだ」

『あんたはいつもゆっくりだよね』

坂田は、私の力を知っている唯一の人間である。

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みるくれーぷあいす(プロフ) - 鈴神さん» 嬉しすぎるコメントありがとうございます!これからも鈴神さんにそう思っていただけるよう頑張ります!よろしくお願いします。 (2019年8月24日 13時) (レス) id: 0de76de774 (このIDを非表示/違反報告)
鈴神(プロフ) - こんにちは!突然ごめんなさい(汗 作品読ませて頂いたんですが、一人一人の気持ちがとても丁寧に書かれていて一つ一つの話にすごく惹かれました!!ほんとに素敵なお話ばかりなのでこれからも応援してます!頑張ってください!! (2019年8月24日 1時) (レス) id: de3968cf62 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:みるくれーぷあいす | 作成日時:2019年8月13日 1時

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