ア サ ヒ 3 ページ19
高杉side
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俺はその日以降、水橋の涙を見てしまった日以降、少しずつ、彼女と打ち解けていった。
放課後屋上で会って、会話を交わす。それくらいの関係だったが、鬼兵隊の奴ら以外でここまで話すような人間はいなかった。
『高杉くん、明日から夏休みだよ』
「そりゃよかったな」
君も同じでしょ、と少しむくれる水橋。夏休み何しようかな、と呟いた。
なんでも出来るんじゃねェか、長ぇからな、と返す。この適当な会話のキャッチボールがすごく楽で好きだった。
『…そうだね』
だから、彼女の言葉にあった間も、見ないふりをした。そして、同時に感じた自分の感情にも蓋をした。彼女に特別な感情を持っていると、信じたくなかった。あの時認めておけばよかった、とも思う。
『そうだ、わたし、高杉くんのこといきなり呼び出すかも』
「は?夏休み中に?」
『うん、一回やってみたくてさ、呼び出し』
相手が高杉くんならできる、といつも通り笑う彼女。俺にならできる、という言葉に感じた嬉しさは一度踏みつけておくことにして、「俺の扱いひでェな」と誤魔化した。
『あはは。…あ、わたし今日はそろそろ行くね。ばいばい』
「…おう」
彼女は立ち上がって、屋上を出ていく。気づけば夕暮れで、空は赤い。彼女が帰ったら俺もここを出ることにしているので、追いかけるように屋上から出た。
廊下を歩いていると、担任の坂田銀八に遭遇した。無視して通り過ぎようとすると、高杉、と声をかけられる。
「…なんだ」
説教だったらすぐに通り過ぎよう、と思いつつ足を止める。銀八は頭を掻きながら、
「お前、最近水橋と仲いいよな」
と予想外のことを言ってきた。
『…は?』
「いや、別に思っただけ。あのさ、」
銀八はやけに真剣に、これからもあいつと仲良くな、と目を細めた。
『…なんでお前がんなこと言うんだよ』
「ちょーっとね。ま、覚えといて」
銀八何事も無かったかのように、ぺたぺたとサンダルを鳴らして歩き去っていく。
銀八は知っていたのだ。夏休みが明けて何が起こるか。きっと俺の感情にも気づいていたんだろう。だから、仲良くしろ、と言ったのだ。この初恋を、離さないために。
__その忠告を聞かなかった自分は、本当に馬鹿だと思う。
***
ぴりりり。
突然鳴った携帯電話の音に、体を起こした。時刻はただいま朝4時。非常識にも程がある。幸い寝てはいなかったが。
「もしもし」
着信相手は誰かなんて確認していなかった。
『…あ、もしもし』
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みるくれーぷあいす(プロフ) - 鈴神さん» 嬉しすぎるコメントありがとうございます!これからも鈴神さんにそう思っていただけるよう頑張ります!よろしくお願いします。 (2019年8月24日 13時) (レス) id: 0de76de774 (このIDを非表示/違反報告)
鈴神(プロフ) - こんにちは!突然ごめんなさい(汗 作品読ませて頂いたんですが、一人一人の気持ちがとても丁寧に書かれていて一つ一つの話にすごく惹かれました!!ほんとに素敵なお話ばかりなのでこれからも応援してます!頑張ってください!! (2019年8月24日 1時) (レス) id: de3968cf62 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みるくれーぷあいす | 作成日時:2019年8月13日 1時