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ベ ー ス 2 ページ2

Aside
·

「サド、ちょっと数学教えてくれヨ。微分積分のとこ」

「チャイナが勉強とは、どういう風の吹き回しでィ」

「失礼だナ、この品行方正女子高生を前にして」

朝、単語カードをめくって通学してくる神楽。
朝休み、暗記ノートをつくっていたお妙。
昼休み、大学の過去問を解いていた沖田。
放課後、銀八に現国の質問をしていた新八。
帰り、《英語の応用問題集》という本をみながら電車に乗っていた近藤。

『ははっ、ひんこーほーせー?初耳』

「Aまでいうかっ!もー、ひどいアル」

ぜんぶが、七月とは大違いだった。
あまりの雰囲気の変わりように、驚いた。
それと同時に、何もしてこなかった自分の浅はかさ加減にようやく気づいた。
考えてみれば、中学の時も経験してるんだから、夏休みに神楽やお妙、土方や沖田たちなんかと遊んだ時の「勉強とかしてる?」「してねー」なんて会話は嘘だとわかったはずだし、「僕これから予備校なんですよ、めんどくさい」なんて新八のボヤきからも、皆は努力しているという事実に気づけたはずだった。
___全ては、自分の馬鹿さが原因だった。
甘えて何もしてこなかった自分の。
そのせいで、周りから、大きく出遅れていた。

「…はよ」

『おはよう、土方』

「おはよーアル」

「よお土方、くたばれ」

『朝の挨拶がそれかよ』

私の言葉に笑う神楽。その手にはシャーペン。言ってたくせに、勉強したくないって。
これが俺の使命だ、といいはる沖田。その手には参考書。あんたも、言ってたくせに、勉強なんて面倒だって。

「お前はいい加減俺の暗殺計画を止めてくんねェか」

「いやでさァ、誰が辞めるか」

いつもの光景。いつもと同じ、軽い会話。
それなのに今は、いつもより息苦しい。
いつもより、なんだか苦い。
___暑いのに、背筋がひんやりとした。


***

「はいここ、入試に出まーす。よく覚えとけよー」

こりゃ覚えさせる気ないな、と思いながらもメモをとる。だらだらな銀八の授業にも、『入試』『受験』『大学』という言葉が増えていた。
もう、本当に、どうしよう。
朝のホームルームで配られた《進路希望調査書》のことを思い出して、またため息をついた。
志望する大学。行きたい就職先。
なんにも、決まってなかった。
きっと皆はもう、やりたいことを決めて、自分の進む道を見据えて動いてるんだ。だらだらしているのは、私だけだ。

「なぁ、A」

『…ん、どしたの土方』

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みるくれーぷあいす(プロフ) - 鈴神さん» 嬉しすぎるコメントありがとうございます!これからも鈴神さんにそう思っていただけるよう頑張ります!よろしくお願いします。 (2019年8月24日 13時) (レス) id: 0de76de774 (このIDを非表示/違反報告)
鈴神(プロフ) - こんにちは!突然ごめんなさい(汗 作品読ませて頂いたんですが、一人一人の気持ちがとても丁寧に書かれていて一つ一つの話にすごく惹かれました!!ほんとに素敵なお話ばかりなのでこれからも応援してます!頑張ってください!! (2019年8月24日 1時) (レス) id: de3968cf62 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:みるくれーぷあいす | 作成日時:2019年8月13日 1時

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