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チ カ ラ 4 ページ25

Aside
·

いつもと同じ心臓の速さでとんでもないことを言ってのける坂田に言葉を失った。

「十年近く片思いしてんだぞ?ここで片鱗くらい渡してもいいだろ」

なんだそれ。坂田が私を好きだと?
だって、そんなの、数字は?

『…全然鼓動速まらないじゃん』

坂田はああ、と頭に手をやる。ほんとにめんどくさかったんだぞ、と何故か得意げに。

「お前さー、その力のせいで俺超苦労してんの。なんとか誤魔化したり運動してみたりさあ」

『…ええ、そ、うなの』

それに、もう十年もすればドキドキはしねえな、と坂田は笑う。

「どちらかといえば、もう、痛いかもしんねえな」

恋のせいで、痛い。私にはまだ意味がわからなくて、眉根を寄せた。
坂田は私と同じように恋愛感情のあれこれなんてしらないだろう、と侮っていた。逆だ。知りすぎてもう、心臓が反応してないんだ。

『えっと…』

なんて言えばいいか、何が正解かわからなくて、正直な気持ちを話すことにした。

『坂田のこと、恋愛的に、見たこと、ないや。……ごめん』

「もう知ってる」

笑い続けている彼は、本当はどう感じてるんだろう。十年越しの片思いの相手に振られているようなものなのに、なんでそんな平然としてるんだろう。

「別に俺は、今すぐ付き合えだのなんだの言うつもりは無い」

妙にさっぱりと言い切った坂田。
彼のその瞳から目がホールドされたみたいに離れない。

「たださ、ここから始まる恋、みたいなのもありじゃね?と俺は思ってる」

なんて恥ずいことを言ってのけるんだ。ここから始まる恋だとぉ?こいつこんなにポエマーだったっけ。無意識に顔に熱が集まっていく。

「俺はお前みたいに、心臓のスピード見えるチカラはないけどよ」

いち、に、さん、し。
いち、に、さん、し。
彼のスピードは変わらない。

「いつか、お前の心臓の速さを操れるくらいになりてェ」

どっどっどっ、と心拍が耳元で聞こえる。
あああもう、もう、もう。

『…じ、自信は、ないけど』

私は彼の真っ直ぐさに負け、ボタンを受け取る。

「十年待ったんだ、もう十年くらい余裕だよ、俺?」

『バーカ』

イケメン気どってんじゃない、と彼の腕を思いっきり叩く。

「うっわ暴力反対、我慢してたんだぞ俺は」

『そーゆーこと言ってるとこのボタン投げ捨てるけどいいんですかー?』

「えっ待ってそれは困るやめてやめて」

いち、に、さん、し。
半透明の数字達は、優しく私を見下ろしていた。


__チ カ ラ 終__

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みるくれーぷあいす(プロフ) - 鈴神さん» 嬉しすぎるコメントありがとうございます!これからも鈴神さんにそう思っていただけるよう頑張ります!よろしくお願いします。 (2019年8月24日 13時) (レス) id: 0de76de774 (このIDを非表示/違反報告)
鈴神(プロフ) - こんにちは!突然ごめんなさい(汗 作品読ませて頂いたんですが、一人一人の気持ちがとても丁寧に書かれていて一つ一つの話にすごく惹かれました!!ほんとに素敵なお話ばかりなのでこれからも応援してます!頑張ってください!! (2019年8月24日 1時) (レス) id: de3968cf62 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:みるくれーぷあいす | 作成日時:2019年8月13日 1時

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