ケ ー キ 4 ページ14
Aside
·
唐突に立ち止まったそーくんの背に、思わずぶつかる。
『どうしたのそーくん』
「…優しい?俺が?」
うん、と頷く。
文句を言いながらも私についてきてくれて、カフェを見つけてくれて、奢ってくれて、ナンパを追い払ってくれて。
すごくすごく、優しい。
『すごく優しいよ』
だからその優しさをもっとほかの人にも、と言おうとした。
そーくんがくるりとこっちを向いた。
『…怒ってる?』
「A」
なんだかちょっと怒った様子のそーくんが、いきなり近づいてくる。
…そーくん?
「こんなことしても、優しいって言うかィ」
突然目の前に現れた、そーくんの顔。長い睫毛が見えるくらいに、息遣いが聞こえるくらいに、距離は近くて。
___そして、唇に何かが触れた。
それがそーくんの唇だって、すぐにわかった。
それは、すぐに離れた。
『…そー、…くん?』
ただただ、呆然とした。
そーくんもびっくりしていた。
先に我に返ったのはそーくんで、悪い、帰りまさァと言って踵を返し、去っていく。
その姿も、私はただ呆然と見つめていた。
『…キスされた』
ようやく動いた口から零れたのは、それだった。
***
「沖田くん、遂にやったわね…」
「ああ…」
路傍で立ちつくし、通行の邪魔をしていた私を回収してくれた、通りがかりの妙ちゃんと九ちゃんに連れられたマクドナルド。カフェとは違って、わちゃわちゃしていた。
『やった?』
なんであんなところで起立してたの、と妙ちゃんに聞かれ、思わず1から10まで全て喋った。
「妙ちゃん、これはもう言った方が二人のためなんじゃないか」
「そうね…うん、それしかないわ」
てっきり《キスされたですって!?》とパニクられるかと思いきや、なんだか二人とも諦めた様子だ。
「あのねAちゃん」
『…はい』
真面目に聞いてね、と真剣に妙ちゃんは前置きする。
「沖田くんは、Aちゃんが好きなのよ」
***
みんなにクールだったんじゃなかった。
私に優しくしていた。みんなへの態度が通常運転だった。傍から見てもそれはバレバレで、あまりに鈍感すぎる私に、あからさまに好きを積もらせていくそーくんに、妙ちゃんたちはすごく焦ったそうだ。
全ては私への好意からだった。そーくんはずっと我慢してた。でも、私の《優しい》発言で、あまりに自分を恋愛の対象として見ていない、と落ち込んだ。
「それで彼、何かが吹っ切れちゃったんじゃないかしら」
だから私に、キスをした。
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みるくれーぷあいす(プロフ) - 鈴神さん» 嬉しすぎるコメントありがとうございます!これからも鈴神さんにそう思っていただけるよう頑張ります!よろしくお願いします。 (2019年8月24日 13時) (レス) id: 0de76de774 (このIDを非表示/違反報告)
鈴神(プロフ) - こんにちは!突然ごめんなさい(汗 作品読ませて頂いたんですが、一人一人の気持ちがとても丁寧に書かれていて一つ一つの話にすごく惹かれました!!ほんとに素敵なお話ばかりなのでこれからも応援してます!頑張ってください!! (2019年8月24日 1時) (レス) id: de3968cf62 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みるくれーぷあいす | 作成日時:2019年8月13日 1時