もやもや関係 ページ46
Aside
·
まただ。
沖田さんは口を閉じて、ただ歩いている。
すごく辛そうで、悲しそうで。
『…』
さすがにここまで来ると私も焦る。
何かやっちゃったっけ?他に原因があると思ってたんだけどな。それに、あまりに悲しそうすぎて。どうにかしたいとは思うけどできない。
「…」
もやもや、もやもや。
喉の奥が詰まる感触。鈍い痛みが全身を侵食していくような。
さっき思い出してしまった感触。気持ち悪いし、重いし、嫌だ。じりじりと寿命を削られていく錯覚まで覚える、怒りと悲しみと後悔が混ざった感触。
__沖田さんはこれを、最近ずっと感じているのだろうか。
一度味わったその感情を思い出しているときが一番辛い。
自分のもやもやと彼の様子と、昔の記憶と今の状況と。夕暮れの空が憎らしくなってきてしまった。
こんなのやだ。
なんとかしたい。
このままもやもやしたままなんて。
『ああああああああああっ、もう!』
「…Aさん?」
突然大声を上げた私を怪訝そうに見る沖田さん。私は大きく肩で息をつく。
あれ、ちょっとすっきりしたかもしれない。
そっか、こんなことでも心は晴れるんだ。
ふと、ずっと横で流れていた川を見る。
濁りもなく、浅い川。都会の割には透明な水。
なんとかしたい、もっと発散したい、と昂りすぎて。
『沖田さんっ、あの川ってキレイですよね?』
「はい?え、まあ、多分」
『ちょっと行ってきます!』
「は!?ちょ、Aさん!?」
驚いている沖田さんを残して土手を駆け下りる。サンダルをその場にぬぎすてる。
近くで見ても川の水は綺麗で。
ばしゃんっ、と足を踏み入れる。
膝丈くらいまでの浅さの水が、心地よく足に染みる。
ばしゃばしゃ、と水をかき回して、飛ばして。
何だか、そんな小さい子みたいな行動で、心の中のもやもやが水と一緒に吹き飛んで言っている気がした。
自分でも訳分からないけど叫ぶ。
『いえええええええい!』
「…マジで何があったんですかィ」
土手を歩いて降りてきた沖田さん。呆れ半分、心配半分、と言った様子だ。
『いやあ、スッキリしますよ沖田さん!もやもやなくなります!』
まるでさっきの感触なんてなかったかのように、喉の通りは心地よくて、冷たさが快い。
難しく考えすぎていただけかもしれない。思いっきり叫んで動くだけであっさり消え失せる感情を、隠して消そうとしていたから、こんなにややこしかったんだ。
『沖田さんも、やりません?』
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作者名:みるくれーぷあいす | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ykoma1218/
作成日時:2019年7月2日 21時