デート関係 ページ39
Aside
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『忘れ物、ないですよね』
「じゃ、行きますかィ」
作戦当日、私は若干の恥ずかしさ(主にこの格好のせい)を抱えながら沖田さんと向き合っていた。
私服をさらりと着こなした沖田さん。お妙さんに遊ばれて、なんて言い訳がましく言ったらだいぶ笑われた。
がちゃ、がちゃん。
ドアと鍵を閉めて、退路を断つ。
【イチャイチャ見せつけ大作戦】決行。
『副長さんは、かぶき町のゲートから右回りでターミナル近くまで見廻りするんですよね』
「はい、もれなくペアもいるけど」
山崎さん、という人が副長さんの見廻りペアらしい。最悪その人には見られてもしょうがない、という心づもりだ。
マンションのエントランスを出る。
ここからは、誰に会うかわからない。
『で、では』
「行きやしょう」
そろそろ、と互いの手を差し出す。握手。
握手状態のまま、腕を下ろす。相変わらず、沖田さんの手はひんやりとしていて少し硬い。否応なく体温が伝わる。
やっぱちょっとどきどきする…ううむ。沖田さんに不意打ちで抱きつかれた時のことも思い出してしまい、ぶんぶんと頭を振った。
「…どうしたんですかィ」
『いえ!何でも!』
沖田さんは怪訝そうな顔で私を見てくる。彼も少し緊張しているのか、繋いでいない方の手を所在なさげに動かしていた。
なるべく手のことは考えないようにしながら、改めて今日の計画を思い返す。
副長さんの見廻りを尾行し、ところどころでイチャイチャを見せ付け。今日は副長さんと山崎さんはお昼ご飯を外で食べるそうなので、その場にあとから入って仲睦ましげにお喋り。二人より早く出て副長さんが午後向かう予定の省庁に先回りしてラブラブ、副長さんの疑いは晴れる、という計画。
『副長さん達、います?』
「んーと…」
ゲート付近まで歩いてきて、沖田さんがキョロキョロと辺りを見回す。それなりに人もいるし、なかなか見つからないかも。
というのは杞憂にすぎなくて。
「あ、いやした!あそこの、松尾と清のところ」
有名な全国チェーンのドラッグストアを述べた沖田さん。確かにあそこに黒い隊服の人がいる。
『ち、近づいてみます?』
「そ、そうしやしょう」
頷きあって一歩を踏み出す。繋いでいる手が揺れる。沖田さんの体に一瞬当たる。
ちょうど副長さん達に私が背を向ける状態で向き合った。道路を挟んだ反対側に副長さん達がいるそうだ。
『いきますっ』
前回と同じく両腕を広げた沖田さんに飛び込む。ああ、痛いカップル…
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作者名:みるくれーぷあいす | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ykoma1218/
作成日時:2019年7月2日 21時