優しい関係 ページ25
沖田side
·
「優しい?」
俺が優しい?
このひとの目は大丈夫か、と結構真面目に思う。優しい、という言葉は俺に一番合わない。
『ええ、少なくとも私は、そう思いますけど』
「…どこがですかィ」
意味がわからないし、理解できない。
Aさんに優しくした意識はない、というか契約に付き合わせている時点でかなり自分勝手ではないだろうか。それに、優しいなんて概念はそもそも自分に備え付けられていないのではないか?
『うーん、どこがって言われると、答えにくいんですけどね。優しい、と思いますよ』
「それ、テキトーって言うんですぜ」
えー、テキトーじゃないですよ、と彼女は抗議するようにお茶を飲む。
なんでこの人は、俺を優しいと思ったんだろう。優しいというのは、姉上や近藤さんや、そういう人につけられるはずの称号だ。
『理屈じゃ説明できないんです』
「へえ」
『信じてないですよね?』
「へええ」
ふざけて返事を返してみれば、Aさんはうわあ酷いと呟いた。
ここしばらく、Aさんと生活してみて、思ったことがある。
__この人、不思議過ぎないか、ということだ。
突然人のことを優しいと言ったり、ノリノリになってみたり、何かを考え込んでいたり。
こんなおかしな契約に付き合ってくれているのだからいい人なのだろう。それくらいしか確実な情報がないくらい、不思議な人だった。今まであったこともないような人だ。
『ごちそうさまでした』
「ごちそうさまでした」
皿洗いますよ、と言うと、いえいえ家事は私の仕事なんで、お風呂入っちゃってくださいと勧められる。
ただ、彼女が不思議な人間、ということと同じくらいに、感じていることがひとつある。
まるで、何年も二人で生活しているかのように、安心感があるのだ。
例えば、姉上と2人の生活。
例えば、真選組での生活。
それらとは経た年月が全く違うというのに、同じように時を過ごしてきたような感覚すら覚えている。
なんでだろう、と考える。
もしかしたら、俺とAさんは、結構気が合うのかもしれない。もし普通に出会えていたら、ただの良い友達になっていたのかもしれない。
『…、うわああああああ!』
「!?」
咄嗟にAさんを支える。彼女の体が両腕にすっぽりと収まる。
どうやらキッチンに敷いてあるマットで足を滑らせてしまったらしく、仰向けに転倒しかけていた。
『あ、ご、ごめんなさい…』
「大丈夫ですかィ?」
93人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:みるくれーぷあいす | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ykoma1218/
作成日時:2019年7月2日 21時