輝く個性の物語【スト＊短編集】 (ページ46)

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「そのままそのまま！もっと上っ！
そうそうっ！クリアっ！ないすーー！！」

見事一番上のホールドにたどり着き、小さく“やった”と声をあげる彼。

そのままマットへと飛び降りた。

閉ざされた視界の中で、よくそんなに高いところから飛び降りられるなっていつも思う。

そして、こんなにも声をあげているのに、私の存在をいっさい認識していない様子の彼に、どこかモヤモヤしている自分もいた。

森「……スゴイっすよ樹。最近このコース全然クリアできてなくて。
彼女さんパワーじゃないですか？」

森本さんがこっそり耳打ちしてくれたけど

「でも……樹、私に気づいてないですよね？w」

って返したら、森本さんは、少しおどけたかおで彼を指差した。

難関を突破した彼は、目隠しをはずして、いつもそこにいるはずの彼、森本さんに対してハイタッチをしようと手をのばす。

森本さんは、“どうぞっ” とでも言いたげに私にアイコンタクトをした。

私はそれに答えて彼の伸ばした手にそっと自分の手を合わせた。

森「ないすーー！！」

未だに私を認識していない彼を、面白がりながら後ろで森本さんが声をかける。

彼はハイタッチしたあとは、森本さんの腕を掴んで誘導してもらう。それがいつもの流れだ。

慣れた手付きでいつものようにそのまま私の腕を掴んだ。