輝く個性の物語【スト＊短編集】 (ページ32)

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「薬。ここに置くね。」

彼の膝にブランケットをかけ、ソファーの前のテーブルにそっと薬と水を用意する。

『ん……。ありがと。はぁはぁ……っ。いたぃっ。』

薬に手をのばした彼がいたそうに顔を歪める。

「樹くん？大丈夫？……私やるねっ。」

彼がここまで辛そうになるのは珍しい。

いつも彼に頼ってばかりの私はこんな時本当に役立たずだ。

『ごめんっ。腕……のばすの……つら、くて。はぁはぁ。』

「いいよいいよ。喋らないで。大丈夫。薬飲んだら楽になるから。」

自分に言い聞かせるように言ってみたけど、彼があまりにも儚くて、消えてしまいそうで……不安で……怖くて……。

薬を取り出すときに震える手を、彼に悟られないようにそっと体で隠した。

『……んっ。……ありがと。はぁ……はぁ……。』

なんとか薬を飲み込んだ彼が、私に寄りかかるように体を預ける。

包み込むように彼を抱き抱えると、洋服の上からでも伝わる彼の鼓動。

「いっぱい頑張ったんだね……。」

どくどくと不規則に動く彼の胸をそっとさすりながら呟く。

『……はぁ。どくどくしすぎて……きもち、わるい……はぁはぁ。自分の、心臓じゃ、ないみたぃ……。』

「そっかそっか。しんどいね。……もうすぐ良くなるよ。」

しばらく “ぎゅっ” って……抱きしめていると伝わる彼の鼓動が、少しずつ整ってくるのを感じた。

「はぁ～。良かった。治まってきたね。」

私は少し安心して、彼を抱きしめていた腕をそっと離した。

『Aの方がドキドキしてんじゃんっ。』

体勢を変えて私の胸に顔を埋めた彼がそう呟く。

『ごめんな。……怖い思いさせたな。……手、震えてた。』

彼は上目使いに見つめながらそういうと、ふわっと私を抱きしめた。

「ドキドキしてるのは、樹くんのせいだよっ？」

『へへっ……。じゃぁ、もっとドキドキさせてやるよ。』

おしまい。