輝く個性の物語【スト＊短編集】 (ページ31)

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“カチャ……”

時刻は深夜２時すぎ。

遠慮がちに玄関の扉が開く。

「樹くん。……おかえりなさい。」

心配で小走りで玄関に駆け寄る私の姿に一瞬驚いたように目を開いた彼は、肩で息をしながら力なく微笑んだ。

『はぁ……A。おき、て、たの？……はぁはぁ。ただ、ぃま。』

喋りながらも苦しそうに左手で胸の辺りのTシャツを掴む彼。

私は彼のとなりに寄り添い、そっとその体を支える。

『はぁ、ごめん、な。……ちょっと、ちょーし、はぁはぁ、悪ぃ……。』

そう言って私の肩に腕を回した。

「うん。しんどくなっちゃったね。そのままソファー行こう。……歩ける？」

彼は小さく頷く。

『ぅん。……A、てつ、だって。』

「わかった。体重かけていいからね。」

ゆっくり歩いて、リビングのソファーに向かう。

こんな時、彼を背負ってでも運んであげられたらいいのに……。

自分の非力さが嫌になる。

彼はドサッとソファーに座ると、そのまま天井を向いて目を閉じ、呼吸を整えるようにゆっくりと深呼吸を繰り返していた。