私と彼の不思議な日々。

私の二十話 ページ40

少しだけ修正して完成した絵を写真に撮り、LINEに送る。
送ったはいいが文章が浮かばなくて、頭を悩ませる中、ベランダからノック。
ノック？
慌てて開けると、咥えタバコの常田さん。

「なぁ、今の画像の絵、見して」
『あ、はいっ。…これ、です』
「…今日暇？あの曲のMVとか、観ませんか」
『見たい、です…！』
「鍵開けとくから、勝手に入ってきて」

ひょい、とキャンバスを持って部屋に戻る彼の言葉をもう一度思い出して、ペンと白紙の束と共に隣の部屋に入る。
置かれたパソコンには動画サイトの画面。
ヘッドホンを渡され、再生された三文小説の映像にまた涙が流れた。

あ、彼は、こないだ私がぶつかった人。
彼だったのか、この声。
あそこで見かけた顔ばかり。

なんか、

『すごい…』
「これが俺の音楽。…あ、Aさんには、こっちのが刺激的かも」

検索されて映るのは、デジタルな映像。
アニメなんかと次元の違う、新しい感覚。
体の毛が逆立つような感覚に釘付けになった。
手元を見ずにペンを走らせる。
この映像の主人公であろう彼を模写した。
これは、油絵具ではないな…新しい画材を買おう。

「このページの映像色々見てみて」
『はいっ、』
「ふは、ここにコーヒー置いとくな」

ことん、と置かれたホットコーヒーを飲みつつ、色んな映像を次々再生する。
あぁ、大変、頭と手元が追いつかない。

遠くで、常田さんが笑う顔が視界に入った。

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