俺の十八話 ページ37
言葉なく、静かに酒を楽しむ。
周りの喧騒も全く気になることなく、ゆっくりと時が流れる感覚。
隣の彼女は小さな口でお通しを口に入れ、それを水割りで流し込んでる。
やっぱり、彼女が好きなんだと、また心が少しだけ固まる。
［Aちゃんとお兄ちゃん、なんだかお似合いね］
『っへ！？ちょ、女将、』
［そうだなぁ、別嬪さんと男前で絵になるな！］
『マスターまで、！』
「はは、ありがとうございます。俺は好きなんすけどね、Aさんが頷いてくんなくって」
『も、常田さん…！』
［私があと40年若かったら、お兄ちゃんみたいな人からの好意、絶対断らないわ］
［お前はAちゃんみたいな別嬪さんじゃなかっただろ、貰ってやった俺に感謝して欲しいもんだ］
［あら、あんただってこのお兄ちゃんには勝てなかったわよ、一緒になった私に感謝して欲しいわぁ］
笑いながら会話を聞きつつ、隣を見れば赤くなって俯く彼女。
あー、外堀からって思ったけど、逆効果やったかな。
最後の煮付けを放り込み、ビールを飲み干す。
ちょうど閉店時間、今日は一人で帰るか。
「お勘定、お願いします」
［あら、いいわよ、今日は］
「え、いや、それは流石に」
［じゃあ、そうねぇ…ビール代だけでいいわ、また来てちょうだいね］
「…すんません、ご馳走様でした。マスターの煮付けマジで好きなんで、また来ます」
［おう、ありがとな！あ、そうだ、これ持ってってくれ、煮付けだ。余り物で申し訳ねぇが］
「いいんすか、こんなに」
［おう、兄ちゃん美味そうに食ってくれっから嬉しくなっちまって］
「ふは、ありがとーございます。また仲間内でも来ますね」
［おう、待ってるよ］
渡された煮付けを持ってると、仕事を終えたAが現れる。
『常田さん、帰りましょ？』
「あ、おう、」
『じゃ、マスター、女将、お疲れ様でした』
［気をつけてねぇ］
［兄ちゃんまたな！］
「ご馳走様でした、おやすみなさい」
街灯の下、少しもどかしい距離を取りながら夜道を歩く。
少しだけ、距離を詰めれば、彼女は笑顔でこちらを見ていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 174人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
怜(プロフ) - ゴマ団子さん» 常田さんとrendez-vousしたいですね…って思ったらこうなりました(笑) (2020年12月7日 20時) (
レス) id: e82758c75a (このIDを非表示/違反報告)
ゴマ団子 - 更新ありがとうございます(#^_^#) 主人公ちゃんと常田さん！rendezvousですか!!良いですね〜rendezvous。羨ましいε=ε=(ﾉ≧∇≦)ﾉ(゜ロ゜;) 益々続きが楽しみです( ´艸｀)身体に気をつけて素敵な毎日をお過ごしくださいませ(*ゝω・*)ノ (2020年12月7日 13時) (レス) id: 39e224bf48 (このIDを非表示/違反報告)
怜(プロフ) - かのんさん» 策士常田は色々な方法で固めていく…それとも無意識なのか…(笑) (2020年11月28日 20時) (レス) id: e82758c75a (このIDを非表示/違反報告)
かのん(プロフ) - 俺のものになるまでもう少し？このまま押せ押せと応援してます！欲しいと思ったら子供のように無邪気な笑顔で近寄ってくるようなそんなイメージ。ついに仕事の依頼までして離さない、逃がさない所は流石です (2020年11月28日 20時) (レス) id: a040a3f75f (このIDを非表示/違反報告)
怜(プロフ) - ゴマ団子さん» 不審者から軍師まで駆け上りましたか、彼は(笑)ありがとうございます、ゴマ団子さんも防寒しっかりなさってくださいね！ (2020年11月28日 11時) (レス) id: e82758c75a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：怜. | 作成日時：2020年11月17日 14時
