私と彼の不思議な日々。

私の十八話 ページ36

『いらっしゃいませー』
［生二つと、オススメの寄せ鍋と、あときゅうりと茄子の一本漬け下さい］
『ありがとうございまーす』

今日もせわしない。
そういえば、金曜日だったっけ。
曜日感覚なんて一ミリもなくなってた。
お店には仕事終わりであろうサラリーマン達。
オーダーを取っては料理を運ぶ。
頭の中ではFlash!!!がエンドレスリピート。
この忙しさと曲のテンポがリンクしてる感じ。

お客さんが減ってきて、あと1時間弱でお店が閉まる。
ラストオーダーを取りに行こうとする中、扉が開くと、常田さん。
カウンターに腰掛けてメニューを見ている。

『いらっしゃいませ』
「どーも。…この煮付けと、浅漬けと、生」
『ありがとうございます』

煮付けがお気に入りなのかな。
お通しと生、浅漬けを彼の目の前に運ぶ。

『本当に来たんですね』
「腹も減ってたし、この煮付け食いたくて」
『マスター喜びますよ』
「Aさんは喜んでくんねぇの？」
『…少し、喜んでます』
「だは、少しかよ」

上機嫌で生を飲む姿は、なんだか絵になる。
女将が常田さんに気付いて、
［あら、こないだのAちゃんのお友達じゃない。お客さんも少ないし、Aちゃんも一杯どうぞ？］
なんて言われ、ご好意を無下にする気にもなれなくてそっと隣に座った。
麦の水割りを貰うと、しびーね、とまた笑顔で言われ、お疲れ様、とグラスを合わせた。
口を潤す程度に含むと、程よい香りとアルコールの味が口内を巡る。
これまたご好意で頂いたお通しと角煮をつまみに飲み進める。

お酒のせいかな。
隣にいると少し落ち着く、と思えた。

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