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四月。
この前満開だと騒がれていた桜も、先週の雨の影響もあり大分散っていた。
今は俺の好きな国語の時間だ。
｢じゃあここ……堀内読んでくれ｣
先生が少し緊張したような、真剣な目で彼女に呼びかけた。
皆一番後ろの席を一斉に見る。
それを見る顔はそれぞれだが、興味と呆れの表情が多いように感じる。
俺は自分の後ろに視線が注がれていると分かっていても、皆に見られているような気がして慌てて後ろを見る。
｢おおい、堀内い｣
堀内は前を見ているものの目が虚ろだ。
それを見て目を合わせて笑う人、苦笑いをする人、ひそひそ話している人……
堀内はそんな人達のことを気にせず……いや、多分彼女には見えていないのだろう、相変わらずぼんやりとしている。
だが先生も負けていない。
｢堀内！ おい堀内！！｣
そこで授業終了を知らせるチャイムが鳴った。
本日も先生の惜敗に終わり、彼は肩を落とした。
＊＊＊＊
始業式から二週間、
俺も気の合う友達を見つけ、それなりに楽しい学校生活を送っている。
｢さやっち、次理科室だよ、行こう！｣
｢……｣
｢ほらほら！｣
｢え……？ あ、うん？｣
友達の笹木彩香に背中を押され、ようやく自分が呼ばれていることに気づいたようだ。
堀内
そしていつもぼんやりしている。
頭はとてもいいらしい。授業中なんていつもぼんやりとしているのに、羨ましい限りである。
｢ねえ、さっき和田先生に名指しされてたの、知ってる？｣
｢誰が｣
｢さやっちだよ！ また気づいていなかったんだ？｣
｢うん｣
｢何考えてたの？｣
｢特に｣
一度話し始めるとぼんやりは止まるらしい。
だが目は眠そうで、返す言葉も短い。
友達の笹木はとても明るい性格で、何故この二人が一緒に居るのか俺には理解出来ないのだけれど。
｢おいカケル、行くぞ｣
｢ん？ ああ｣
俺は
｢お前また堀内見てたんじゃねえか。惚れたか？｣
にやにやしながら言ってくる彼に｢んなわけねえだろ、ほら理科室行くぞ｣と返し席を立つ。
｢お前、また国語受けるつもりか？ 本当に好きだな｣
｢え？｣
自分が国語の用意を持っていたことに気づかなかった。慌てて机の中から理科の用意を取り出す。
教室を出ようとすると……理科のノートを取り出した堀内と目が合った、気がした。
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