〈ツイステ〉 ねじれた世界の御伽噺 第三幕

第二章 6＿妖精 ページ15

その白い毛玉は私にズリズリと近寄ってきた。教科書が勝手に動き回ってシュールだ。


ジャック「何してるんだ？」
『いや、何というか……』


ジャック君にも見えるように身体を動かすが、無反応。
やっぱり、見えてないんだ。私だけってこと？



　【駄目よ。私達は普通じゃ見えないの。
　
　 人間の匂いは嫌いだから】



『え…？』



聞き覚えのある声がすぐ近くから聞こえる。
自分の右肩を見ると…そこにはこの間、私を森まで連れてきた妖精、ドリュアスがいた。


『え、うわぁ！？』


驚いて、椅子から飛び落ちる。
ヒュンと羽根を使って落ちるのを回避したのドリュアス。


翡翠の髪を持つ美しい少女の妖精。


『ド、ドリュアス…？』

　
　【覚えててくれてよかった〜

　でも、Aならもっと気軽に呼んでいいのよ。

　 普通、私達を“妖精”何て固い言葉で呼んだら嫌なんだけど】


『え、妖精じゃないの？』


　【位置づけは妖精や精霊よ。

　 たんに嫌なだけ。Aは特別。

　 ドリューって気軽に呼んで】



力多き存在の妖精を友達感覚で呼んでもいいのか…？
というか、まだゴーグルもつけてないのに、どうして見えるのかな…。


ジャック「おい、大丈夫か？」
『あ、うん』


ジャック君に手を差し出される。
彼もそうだけど、生徒全員不審顔で見てくる。なんか私が変な人になってない？


ジャック「たく急に……てうぉ！？」
『痛いっ…』
ジャック「あ、悪ぃ！」



立ち上がらせようとしてくれたジャック君だが、頭に上っていた白い毛玉に驚いて、手を放された。勢いよく腰をぶつけたから痛い。



ジャック「な、何だ、それ！？」
『……さ、さぁ？兎？』
ジャック「どっちかって言うと…リスじゃねぇか？」
クルーウェル「………‥ふぅむ」


クルーウェル先生が私達を見て、驚いた様に目を見開き呟く。


クルーウェル「ほぉ、ゴーグル無しで見えているのだな」

『……え、えっと、これって』

クルーウェル「全員、ゴーグルをつけて、Aを見ろ。ジャック・ハウルは……“今は”必要なさそうだな」


ざわついた他の生徒達が言われた通りゴーグルをつけてこちらを見る。
そして、多くが声を上げ、困惑している。

近づいて来たクルーウェル先生が私に手を差し伸べてくれた。


クルーウェル「妖精や精霊に好かれているな」


その手をとり、漸く立ち上がる。

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