神のような ページ16
三郎side
「家まで送るよ。ほら行こう」
「……嫌だ。帰らない。今日は絶対帰らない」
「A……」
「ごめん山田くん、山田くんは帰って。お兄さんたち心配しちゃう」
……。
僕はAの腕を引いて立ち上がる。
そして歩き出す。目指すは我が家。
Aは抵抗する。家には帰らないって言ってるでしょと怒る。
僕は涙で真っ赤に腫れた目を歪ませるAに笑いかける。
「あんたの家じゃない。僕の家に帰ろう」
「え?山田くんの家に?でも、迷惑じゃ……」
「大丈夫。大丈夫だから」
「……うん……」
Aはまた泣いた。壊れたロボットのようにただただ涙を流している。
家に着くといち兄ではなく二郎に事情を話した。
二郎は兄ちゃんに伝えておくと言い、夕飯までまだかかるからゆっくりしとけと言った。
僕はAを連れて部屋に入る。
そして僕は洗面所でタオルを水で濡らし部屋に戻った。
「これ、目に当てておきなよ」
「ごめん……」
「ごめんじゃなくてありがとうでしょ」
「そうだね……ありがとう」
弱々しく笑うAは学校で見るお気楽なキャラクターとはかけ離れて見えて、それが今自分だけしか見ていないと思うと優越感に浸れた。
……
夕飯はなんと唐揚げだった。
Aは泣き疲れながらも唐揚げにはしゃいでいた。
「すみません、今日もまた夕飯ご馳走になってしまって……」
「はは、いいんだよ。好きなだけ食べていいし居てくれていいよ」
「あ!おいさぶろー、お前俺の取るなよな!」
「ハッ!さっさと食べないのが悪いんだよ!」
僕は二郎から奪った唐揚げを見せつけるように頬張る。
Aはずっといち兄に申し訳なさそうにしている。
いち兄はどうもAの家に連絡を済ませてくれたらしい。
優しい目で僕らを見る彼は大人そのものだった。
僕や二郎が憧れる彼は本当に神のような人だった。
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りんご - この作品は一言では表せないそんな素敵な作品に感じました。三郎と主人公の心情の変わり方が自然だなって思いました。是非とも作品の続きを見たいです! (4月1日 10時) (レス) @page44 id: 169b1ab724 (このIDを非表示/違反報告)
海老天ぷら - マカロニさん» コメントありがとうこざいます。返信大変遅れて申し訳ございません!『人間失格』は非常に私に影響を与えた本で、とっても大好きです!ただ、この作品は私の抱えている気持ちを綴っているものになりますので、温かく見守って頂けたらと思います! (2022年6月4日 23時) (レス) @page35 id: 8ac8a7e5a1 (このIDを非表示/違反報告)
マカロニ(プロフ) - コメント失礼します。作者様もしかして、太宰治の「人間失格」好きですか……?「食事が何かの儀式のよう」という表現が出てきたので気になりました。違っていたらすみません! (2020年8月11日 22時) (レス) id: 30ec427a94 (このIDを非表示/違反報告)
海老天ぷら - らあなさん» コメントありがとうございます!夢主ちゃんの気持ち・環境等は結構悩みながら書いてるのでそう言って頂けて嬉しいです!山田兄弟と夢主ちゃんの絡み好きなのでもっと書きますね!(え)更新頑張ります!! (2020年4月26日 19時) (レス) id: db1ea870ef (このIDを非表示/違反報告)
海老天ぷら - ぱあたんさん» コメントありがとうございます!嬉しいです、ありがとうございます!嬉しすぎて私が泣いちゃいます…(え)更新がんばります…! (2020年4月26日 19時) (レス) id: db1ea870ef (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:海老天ぷら | 作成日時:2020年2月10日 15時