俺の神様。 ページ15
二郎side
「ただいまー」
「兄ちゃんおかえり」
「おう。あれ三郎は?」
「悩みを抱えてるダチの元に行ったよ」
兄ちゃんは少し驚いた顔をしてへぇと小さく言った。
大方兄ちゃんも三郎にとってのダチが誰なのか見当がついているだろう。
──────昨日のあの女子のことだろう。
昨日見てる限りでは彼女とかでは無さそうだ。つまんねーの。
「おし、三郎の好物でも作るか!」
「えっじゃあ唐揚げ!?」
「正解!」
「やったー!」
「二郎手伝ってくれ!」
「うん、勿論!」
俺は兄ちゃんと共に台所に立つ。
肉を冷凍庫から取り出してまな板に置く。包丁で切っていく。
……俺、中学の時、三郎みたいに何かに思い倦ねたことあったかな。
いつも馬鹿正直に生きてきた。一応、施設ではお兄ちゃんだったから、それなりにお兄ちゃんという役割を果たしてきていた……と思う。
でも俺が演じていたお兄ちゃんは、兄ちゃんとはかけ離れてる。
兄ちゃんのように大きな背中で、皆を引っ張り上げることは出来ない。
三郎だって守り抜くことは出来なかった。施設のアイツの思惑を見抜くことすら出来なかった。
いつも兄ちゃんの負担になってる気がして、俺も兄なのにいつもいつも劣等感を抱えているような気持ちで。
……ああ、くそ、俺はこんなこと。
「二郎。三郎は今お前のおかげで友達のところに行けたんだろ?」
「……え?」
「ダチのために何ができるか、二郎が教えてやったんだろう。ありがとな、お兄ちゃん」
「あはは……うん、兄ちゃんは何でもお見通しなんだね。すごいや」
俺はじんわりと胸の温かさを感じながら、少し滲んだ涙を呑み込んだ。
あぁ、本当に兄ちゃんはすごい。ほんとに神様みたい。
俺の神様。
手を伸ばせば届く。でも、その中身には絶対に触れられない。
兄ちゃんには俺なんかでは到底抱えきれないほどの秘密がある。
三郎は劣等感を抱える俺とは違う。
頼むから、俺のようになるな。
三郎は頭がいいからもう俺のことを頼ってくれなくなるだろう。経験を次に生かせる。
肉が揚がる音がする。香ばしい香りが鼻をくすぐる。
……三郎、大丈夫かな。
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りんご - この作品は一言では表せないそんな素敵な作品に感じました。三郎と主人公の心情の変わり方が自然だなって思いました。是非とも作品の続きを見たいです! (4月1日 10時) (レス) @page44 id: 169b1ab724 (このIDを非表示/違反報告)
海老天ぷら - マカロニさん» コメントありがとうこざいます。返信大変遅れて申し訳ございません!『人間失格』は非常に私に影響を与えた本で、とっても大好きです!ただ、この作品は私の抱えている気持ちを綴っているものになりますので、温かく見守って頂けたらと思います! (2022年6月4日 23時) (レス) @page35 id: 8ac8a7e5a1 (このIDを非表示/違反報告)
マカロニ(プロフ) - コメント失礼します。作者様もしかして、太宰治の「人間失格」好きですか……?「食事が何かの儀式のよう」という表現が出てきたので気になりました。違っていたらすみません! (2020年8月11日 22時) (レス) id: 30ec427a94 (このIDを非表示/違反報告)
海老天ぷら - らあなさん» コメントありがとうございます!夢主ちゃんの気持ち・環境等は結構悩みながら書いてるのでそう言って頂けて嬉しいです!山田兄弟と夢主ちゃんの絡み好きなのでもっと書きますね!(え)更新頑張ります!! (2020年4月26日 19時) (レス) id: db1ea870ef (このIDを非表示/違反報告)
海老天ぷら - ぱあたんさん» コメントありがとうございます!嬉しいです、ありがとうございます!嬉しすぎて私が泣いちゃいます…(え)更新がんばります…! (2020年4月26日 19時) (レス) id: db1ea870ef (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:海老天ぷら | 作成日時:2020年2月10日 15時