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ごめんなさい ページ6

三郎side


僕が唐揚げを食べるとAは笑った。僕は疑問をぶつけた。


「何でこんなところにいるのさ?」

「毎日こういうところにいるよ私」

「え……」

「あ、制服だからたまに補導されるけどね」


いつもは私服に着替えたりしてるんだとAはまた笑う。


唐揚げを食べ終わったらしく立ち上がる。


Aは振り返り、僕に尋ねる。


「山田くん、どこ行く?」


そう言って彼女は笑った。


……


Aについていくと、なんと彼女は僕を家まで送ってくれただけだった。


僕が不満げにAを睨むと、何故か悲しげな顔をした。


「山田くんは家に帰ったほうがいいよ。家族……も心配しているでしょう?」

「……僕は今度のディビジョンラップバトルが怖いんだ」

「……」

「兄の足を引っ張ってしまいそうで……」


手が震える。冷汗が流れて、唇を噛み締めた。


手を握られた。震えが伝わっていく。


彼女の呼吸が伝わり、僕は目が潤み始めた。


ずっと前から、僕のスマホが震えている。


額が触れた。髪がくすぐったい。目を瞑り、問うた。


「僕は、ここにいてもいいのかな」

「勿論。君はここにいていい、ここにいるべきだ」


欲しい言葉が転がり落ちる。


手で救い上げて口にする。


離れると、大きな音を立てて家の中からいち兄が焦った顔で出てきた。いち兄はそのまま僕を抱きしめた。


「さ、さぶろ……!」

「いち兄……」

「心配した、お前が出て行ったって二郎から聞いて……お前のことだ、すぐ帰って来るって。電話も出ないし、メッセージも……ああ、良かった……」

「……ごめんなさい」


いち兄や二郎が僕の歳だった時、帰って来ない日はいくらでもあった。分かってる、僕は大事にされている。


でも……。


いち兄は僕から離れ、Aを眼に映す。


「じゃあ私帰るね。また明日。山田くん」

「あっ、ちょっと待って。君、三郎の友達?良かったら、飯食っていかないか?」


すでに背を向けていたAは振り返った。

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りんご - この作品は一言では表せないそんな素敵な作品に感じました。三郎と主人公の心情の変わり方が自然だなって思いました。是非とも作品の続きを見たいです! (4月1日 10時) (レス) @page44 id: 169b1ab724 (このIDを非表示/違反報告)
海老天ぷら - マカロニさん» コメントありがとうこざいます。返信大変遅れて申し訳ございません!『人間失格』は非常に私に影響を与えた本で、とっても大好きです!ただ、この作品は私の抱えている気持ちを綴っているものになりますので、温かく見守って頂けたらと思います! (2022年6月4日 23時) (レス) @page35 id: 8ac8a7e5a1 (このIDを非表示/違反報告)
マカロニ(プロフ) - コメント失礼します。作者様もしかして、太宰治の「人間失格」好きですか……?「食事が何かの儀式のよう」という表現が出てきたので気になりました。違っていたらすみません! (2020年8月11日 22時) (レス) id: 30ec427a94 (このIDを非表示/違反報告)
海老天ぷら - らあなさん» コメントありがとうございます!夢主ちゃんの気持ち・環境等は結構悩みながら書いてるのでそう言って頂けて嬉しいです!山田兄弟と夢主ちゃんの絡み好きなのでもっと書きますね!(え)更新頑張ります!! (2020年4月26日 19時) (レス) id: db1ea870ef (このIDを非表示/違反報告)
海老天ぷら - ぱあたんさん» コメントありがとうございます!嬉しいです、ありがとうございます!嬉しすぎて私が泣いちゃいます…(え)更新がんばります…! (2020年4月26日 19時) (レス) id: db1ea870ef (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:海老天ぷら | 作成日時:2020年2月10日 15時

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