・ ページ17
一体何故？
絶対に、鍵はかかっていた。
確実に、抜け出せないように閉じ込めたはずだ。
アイツらにそんな才能があるとも思えない。
そんな奴らが、一体何故………？
考えられる可能性としては、誰かがあの鍵を解いた、ということ。
ふと、脳裏に水色が脳裏に過ぎった。
あのベルマン……
そういえば前も、同じようなことをしていたらしい。
もしかして＿＿＿＿＿＿＿＿
「……だいじょーぶー？」
「だ、誰…ですか」
頭に、冷たい風が吹き抜けた感触がした。
視界に映る、赤と青。
妙な寒気が、背筋を伝った。
その感覚が気持ち悪くて、思わず手を握りしめた。
手の肉に爪が食い込む感触。
暖かい"何か"が手の中で、じわりと広がった。
いけない、ぼーっとしていたようだ。
もう二度と、失敗は許されないというのに。
この頭は、なんて呑気な思考をしているんだろう。
＿＿＿＿＿＿＿＿大丈夫。冷静に立ち回れ、A。
強く握りしめていた手を、ぱっと放した。
『……初めまして。私、Aと申します』
嬢がカーテシーをするときのように、
白衣の裾をスカートに見立て、綺麗にお辞儀をする。
口元に笑みを作りながら、顔を上げた。
こちらを奇妙に、警戒して見つめる暁の瞳。
こちらを興味深そうに、楽しそうに見つめる朝日の瞳。
二つの双眸が、私を貫く。
＿＿＿＿＿＿＿＿もう二度と、間違えない。
＿＿＿＿＿＿＿＿もう二度と、迷いはしない。
『………GROUND FLOORは、こちらです。
ご案内いたしますので、ご一緒にお越しくださいませ。』
私はくるりと背を向けて、GROUND FLOORへ向かった。
きっと、彼らは私についてくる。
だって、それしか選択肢がないのだから。
そして、今も。
私の靴音の数拍後に、二人分の靴音が重唱し始める。
冷笑が口から漏れぬように、
口元に手を添えながら、足を進めていく。
ああ、人間は、実に面白いものだな。
愚かで、滑稽で……
哀れみを超えて、もはや愛おしく思えてくる。
どうしようもなく膨らんだ背徳感が、
私にゆるく付きまとった。
＿＿＿＿＿＿＿＿これだから、やめられないんだよ。
そんなことを考えながら、
GROUND FLOORへと迷わず進んで行った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 97人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：さくさくパンダ | 作成日時：2023年8月26日 13時
