救済思想 (ページ14)

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薬剤師の疑義ページ14

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薬剤師 side

彼女は、風に吹かれる花びらのように、
いつのまにか2階へと消えていた。

彼女を止めようと、彼女を追おうとして
出た声は、空中をゆらゆら彷徨って。

俺は、その場で立ち尽くすことしかできなかった。

＿＿＿＿＿＿＿＿彼女は、一体何者だ？
その問いだけが、俺の頭を支配した。

瞳を閉じて、思い浮かべる。

瞼の裏には、美しい彼女が微笑んでいた。

あの、誰もが惹かれる魔性の瞳を持つ彼女が。
あの、マリアのように可憐で、美しい彼女が。

彼女は、自身を A と名乗った。

「…ぃ！」

このホテルを知っているような口ぶりで、
彼女は俺をここまで連れてきた。

彼女は、また笑った。

そして、感情のこもっていない、濁り切った瞳で。
「やるべきことがある」

そう言い残した。そして、そのまま消えていって……。

「…い！」

黒で統一された服。
その上に、きっちりと着られた白衣。

服装的に、ホテリエではないだろう。
あんな私服感満載なホテリエがいるはずない。

では、なぜこのホテルのことを知っているのか？

来たことがあるのだろうか。
それとも、何か別の深い理由でも＿＿＿＿＿＿＿＿

「お…！！！」

ああ、なんだか、周りが騒がしいような。

きっと気のせいだ。
だってこの場には俺しかいないのだから。

彼女は、本当に………何者なんだ？

会ったことあるような、
どこか懐かしい雰囲気を感じる彼女。

……彼女はきっと、「かくしごと」をしている。
信頼することは難しそうだ。

ずきり。