幸せを呼ぶ桜【黄】 (ページ3)

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そう、私はこの国を守る者として日々凶悪犯と闘っている。
警察庁警備局警備企画課、通称ゼロに所属。

国家試験を合格し、警察学校の中で上位の成績を収めた者だけが入れるいわば選りすぐりのエリート集団。なーんて、聞こえはいいけどね。

公安の仕事は、事件が表に出てから捜査する刑事警察とは違って、事件が表に出ないように捜査するのが私達の仕事。

監視対象者いわゆる“マル対”を追跡するために、時にはゴミを漁って生活実態を洗いだしたり、金や女に関する弱みを握ったりなんてことも。華やかそうにみえるこの世界は、こんな地味な仕事も多い。

今みたいな、報告書の作成だってね。

『失礼します』

警察署に戻ってから速攻で仕上げた報告書を手に、岩本さんがいる部屋の扉をノックし入る。

一歩近づくと、岩本さんが視線をちらっと向けて静かに口を開いた。

岩「弁解するなら今だけど？」
『………』

今だけど？と言う岩本さんの顔はやっぱり怖くて、どれだけバカな私でも“今”じゃない事だけは分かる。

言い訳したらどうなるか想像するだけで……うん。想像すらしたくない。

『本当に申し訳ございませんでした』
岩「俺が言ったこと覚えてる？」
『……勝手な行動はするな、と』
岩「それがなんであぁなった？」

”あぁなった“とは、もう１人の犯人に気付かず銃を突き付けられた事を言ってるんだろう。

……相手が1人ならなんとかできると思った。

完全に私のおごりだ。実際、あのまま岩本さん達が駆けつけてくれなかったらどう対処できていたか分からない。

『もっと慎重に行動すべきでした。犯人が1人だと決めつけて不用意に近づいた私の判断不足です』
岩「今ならどうすべきだったと思う？」
『完全に屋上に入るべきではなかったと思います。扉の手前でマル対を観察できれば、後ろからきた奴にも気配で気づけたはず。一対一ならまだどうにかなります』
岩「半分正解、だな」
『もう半分はなんですか？』

私の質問に返ってきたのは答えではなく、岩本さんの深いため息だった。

え！なんで？！

また、じろりと岩本さんの視線がこちらに向く。

『ぁの、』
岩「答えが分かるまで、お前は現場に出るな」
『っ、嫌です！』
岩「上司命令。以上だ」

もう戻っていい、と岩本さんはそのまま手元の書類に目を落とした。