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キーンコーンとたまに音が外れる古ぼけた予鈴がなった。
私は急いで顔を隠していた本をしまい、1限目である現代文の準備をした。
今日は、漢字の小テストをやると前の時間に言っていたことを思いだし、黄木くんのことを考えるのをやめて、ルーズリーフで漢字練習をはじめた。
先生が教室に入ってきて、小テストが配られた。
「5分後、隣で交換して答え合わせ。はじめ!」
ピッとストップウォッチをスタートさせる音が鳴るとみんな一斉にテストにとりかかった。
私も問題とにらみ合う。
「終わり!隣と交換して、黒板に答え書いていくから丸つけして」
先生の言葉とともに私はシャープペンを置いた。
予鈴後の勉強のお陰もあってか、なかなか解けたんじゃないかと思う。
さぁ、後は隣と交換して丸付けをするだけ……。
「はい、瀬川さん」
えっ?!と身体が反応する。
そうだった。
隣の席は私の好きな黄木くんだったことを思い出す。
いつも授業中にこっそりと隣を見ることもあったのに何でこんなときにだけ忘れてしまうのだろう。
私は、つい焦ってしまい、
「あっ、うん、ありがとう……!字汚くて読めなかったらごめんね、丸付け下手だったらごめんね……!」
と早口で言ってしまった。
黄木くんが口元をおさえる。
やってしまった。黄木くんは引いただろうか。サーッと顔が青くなっていくのを感じる。
「ふっ、ははっ!瀬川さんって面白いですね。僕、丸付けの上手い下手とかはじめて聞きました……!」
「え……?」
黄木くんは笑ってくれた。
先生に見つからないようにそっと。私の言ったことに笑ってくれた。
それが嬉しかった。
私の顔はきっと今、赤いだろう。
りんごみたいに真っ赤になっている。
顔を見られるのが恥ずかしくて、下を向いたまま答案用紙を交換した。
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きキ(プロフ) - パスタさん» ありがとうございます〜!!自分のペースで頑張らせていただきます…! (2021年4月26日 8時) (レス) id: 937d8618c2 (このIDを非表示/違反報告)
パスタ - 更新頑張ってください (2021年4月26日 7時) (レス) id: ea8636738a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:といぷ~ | 作成日時:2021年4月25日 9時