ちいさな恋 4th

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3年に上がった5月。体育祭。




借り物競走に出たと思ったら、隣に座ってるAのクラスの応援席までダッシュして


「Aー！ジャージ！！貸してー！！！」


なんて馬鹿でかい声で叫ぶもんだから、周りの子たちは大騒ぎ。


ジャージを渡すAはもう耳まで真っ赤だし…

宏光はそんなの全く見ずにゴールまで一直線だし。




昼休憩の間にジャージを返しに行くっていうから付き添ったら

“もう先輩！大きな声で名前呼ばないでくださいっ/// ”


なんてめっちゃ女子な顔して抗議してるA。




宏「えー？だってじゃないと聞こえねーじゃん！

ぜってーAに借りようと思ったんだもん。」



なんてサラッと放った一言だけど…



ほら。あいつめっちゃ照れてんじゃん！

お礼にって渡されたパックジュース握りしめてるし。





…見えてるよー、兄ちゃん見てるよー。




宏光は楽しそうに笑ってるし…

こわいこわい。無意識ってこわい。








俺が行かない時も、昼休みのチャイムが鳴ったら飲み物買いに行って “ Aいたわー。 ”なんつって戻ってくる宏光。

Aもこいつに会えるから毎日同じ時間に向かってんだろーな、とか考えてたら


いや、もうどっちか告れよ！！


って思うけど、肝心の宏光に全く自覚がないから、そりゃAも言えねーわな…。





AはAで、誰にも自分の気持ちはバレてないと思ってるみてーだし。





知ってるよー、兄ちゃん知ってるー！





…まぁ、兄貴がしゃしゃり出る場面でも無いし、

第一俺、そんなキャラじゃないし。






そう思って傍観して過ごしてたら、
夏の終わりに宏光が急に真剣な表情で

“ 大阪の大学を受ける ”

って言ってきて。




聞いた時は俺も動揺したし、全然考えられなかったけど、すぐに浮かんできたのはAの顔。




俺から言わなくてもいいことなんだろうけど

…でも、これはやっぱ早めに教えといてやりてーな、って。



宏光が大阪の大学を受ける、って伝えたら



“ 寂しくなるね。”



って言ってすぐ自分の部屋に戻ってったA。







その次の日から、いつもの自販にも食堂にも来なくなって。






宏光「…もしかして、A休んでる？」




「……や、ちゃんと来てるよ。」






宏「……そっか。 最近あいつ来ねーのな。」



って言う宏光は宏光で、自分では気付いてないけど日に日にテンション下がってるし。





…どーしたもんかな。

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