紫の王子さまとの、甘い甘い生活

指輪 ページ29

【Aside】

なーくんが倒れた。
その連絡を聞いて、私はアルバイトで早く帰ることを話して全速力で走り出した。

早く、病院に行かないと。

私が病院までたどり着いて、息を切らしていると、


さ「Aちゃんっ！」


と、声が聞こえた。
さとみくんだ。


「なーくんは！？」


さとみくんについていくと、ベッドの方まで足が進んでいた。
毒りんごを食べた白雪姫のように目を閉じたまま、動かないなーくんを見て、私は呆然とした。


看「Aさんでしょうか？」


看護婦さんが、暗い顔をして私の方まで来た。


「はい、そうです……」


看「あの、これ……。ななもりさんのバッグに入っていたもののようで……。転がり落ちたので拾ったのですが……」


白い小さな箱だった。

そこに、なーくんの字で『Aへ』と書かれた紙が貼られてある。
箱を開けてみると、キレイな指輪が入ってあった。


もしかして、これのためにもなーくんは頑張ってくれてたの……？


私は、そこで大声を上げて泣いた。

なーくん、ごめんなさい。
無理をさせちゃって、手伝うことが全然できなくて、ごめんなさい……！


「指輪なんていらなかったのにっ……。わ、私はなーくんが元気になってくれればそれでよかったのに……」


それ以外の言葉は何も出なかった。
ただただ、私の目からは大量のしずくが落ちていくだけだった。

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