【進撃の巨人】自由と信念_Ⅱ【ツイステッドワンダーランド】 (ページ32)

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新月の晩、彼は静かに覚醒した。
入学式の日に身につけていたボディスーツを身に纏い、プロテクターを装着する。
腰に立体機動装置を付け、ブレードを抜く。異常は無さそうだ。
窓から部屋を出て、鏡を通り抜ける。
闇の鏡。あの日から沈黙を貫き続けている。
ブレードを握り締め、掌から滲んだ血を見せつけるように前に掲げて見せた。

｢汝……真逆、｣
｢悪ィな、借りんぞ｣

唸るような声を最後に、闇の鏡に浮かぶ瞳の光は消え失せた。

｢汝は何者なりや？｣
｢この天下に存在なべからぬ者｣

｢汝は何者なりや？｣
｢異なる魂を持つ者｣

｢汝は何者なりや？｣
｢我が名はアルノート･アウドイン。｣

｢＿＿汝の望み、申してみぞ｣
｢元ありし天下に帰らせよ。｣

淡々としたやり取り。
それでも緊迫した雰囲気と、異様な熱気はこれが禁術であるからに他ならない。

｢その望み、相承りき。｣

見えない何かが、渦巻くのが見える。
その瞬間に扉が開け放たれた。
クロウリーの目が見開かれる。
こんな高度な禁術、一体どうやって。
渦巻くエネルギーの大きさに、クロウリーですらも気圧されていた。

｢……呪術の危険性を知った上で貴様はこんな代物を作り上げたのか!?｣

クルーウェルが吼えて、ようやく彼はこちらを向く。
ゾッとした。
彼は、正気を失ってなんかない。
至って正気であの禁術を練り上げたのだ。
止められないのか、とクロウリーに掴みかかるが、クロウリーは心底悔しげに首を振る。

｢彼処まで完成されたモノは術士以外には止められません。｣
｢なっ……｣

また、彼奴を殺すのか。

｢ですがあれは彼が相当意識を注いで作ったもの。
その分疲労･疲弊も相当激しいはずです。
一度意識を失わせてしまえば、今回は失敗に終わるでしょう。｣

禁術とは回数を重ねる毎に難易度が跳ね上がっていく。
二回目というのは基本的に存在しない。
先程呼び出していた三人の生徒たちはそれを聞き、浅く頷いた。
自分たちが止めるのだ。
不幸中の幸いだがこちらには寮長が二人いる。
簡単に負けてやると思うなよ、仔犬。

｢仔犬、さっさとこっちに来い。どうにかしてやる。｣

彼の表情はいっぺんたりとも変わらない。
暫くして僅かに悲しさを滲ませ、眉間に皺を寄せた。
そしてブレードを引き抜く。

｢誰か一歩でも近づいたら、この学校の人間を片っ端から殺していく。｣

悪夢のような夜が始まった。