【進撃の巨人】自由と信念_Ⅱ【ツイステッドワンダーランド】 (ページ16)

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夜。
なんとなく寝付けなくてベッドから上体を起こす。
枕元に置かれた装置を撫で、窓の外に見える月を眺めた。
否、”なんとなく”ではない。
無性に不安になる、得体の知れない夢を見た。
確証はないが何かが起こる。
寝巻きから着替え、腰に装置をつけていれば扉が開いた。

｢……巨人は、夜は出ないんじゃないのか｣
｢例外もいるって話もしただろォが｣

予感や直感、感覚は案外侮れないものだったりする。
しかも今夜は満月。奴の脊髄液を飲んだ巨人なら活動出来る。
窓を開けた。

｢仔犬、｣
｢……何も話すつもりはねェよ｣

きっとアンタじゃ分からない。
それは喜ばしいことなのだろう。
仲間のために全てを捧げられる理由が分からないこと。
自由の為に死に物狂いで戦う理由が分からないこと。
命を賭して戦う理由が分からないこと。
それでいい。
自分が帰った時、全ては夢だったとでも思えれば。
窓の外から咆哮が聞こえた。

｢学校全体に防衛魔法を!!｣
｢了解した｣

壁に立て掛けられたそれを躊躇いもなく掴み、窓枠から身を躍らせるようにして外に出る。
茶色の体毛に包まれた胴体、長い腕、黄色い目。
然れど奴は何も声を発さない。

｢……久しぶりだなァ、戦士長サマよォ｣

ギリ、と歯を噛み締めた。
きっと言葉は理解していないだろう。それでも彼の発した声が”人間の声”というだけで奴は此方を向く。
ジークとの協力は不可欠だった。
あの時もそれは分かっていた。エレンの言い分だって理にかなっていたし、大人になれていないのは自分たちの方だった。
でも。
だとしても、仲間を殺し、導いてくれた先輩たちを殺し、団長を殺したジークを許容できるほど彼は人でなしじゃなかった。
ぶぉん、と凄まじい音を立てて振られる腕。
迎え撃つように切り裂けば獣の肘から先がなくなる。
ガァァァ、と苦しげな声はやはり獣のモノで違いなかった。

｢いい子チャン達が起きちまうだろォが｣

足の腱を削ぎ、倒れたところで再生しかけていた片腕と一緒にもう片腕も肩から先を落としてやる。
項にブレードを突き立てようとしたその瞬間。

｢アァァァァァァ!!｣
｢……ふざけやがって!!｣

むくりむくり。
月の光の下で、いくつもの影が起き上がる。
最悪だ。何故、こうなる前に仕留めきれなかった？
獣から離れ、木の上に移ってから学園長に渡されたスマホを耳に当てる。

『仔犬、状況は!?』
｢……防衛魔法を強化してくれ。｣

長い、長い戦いが始まった。