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にこりと嫌味なく微笑んだその表情。
ピタリとその顔は”妹”に重なって見えた。
＿＿忌々しい、あの無垢な笑みに。
元々彼が女性らしい顔だから、というのもあるのだろうが、にしてもそっくりな顔立ちだった。
柔らかそうな髪が首筋で揺れる。
｢……貴方と会ったことはないと思うんだけど｣
｢そうですね｣
彼女が円の姓を捨てたのは彼が生まれるよりもずっと前のことで、皇家のメイドとして働き始めたのも同じ頃だった。
血縁上は彼の実母である皇涼子＿＿否、円涼子の姉に当たるが、その縁は彼が生まれるよりも前に切れてしまっていた。
きっとあの家も自分の存在を無かったことにしているはず。
故に、彼が自分の存在を知っていることが不思議で仕方がなかった。
｢爺やに頼んでメイドの一覧を持ってきてもらったんですよ。｣
これがその写しです、と掲げた紙の束に溜息を漏らす。
良くも悪くも徹底している。こういうところはあの人に似たらしい。
｢”江月凛子”。それが今の貴女の名前ですよね？｣
｢分かりきっていることを聞くもんじゃないわ｣
江月という姓に聞き覚えがあった。
書庫に残っていた家系図を引っ張り出し、一つ一つ読み込んだのを覚えている。
＿＿江月清雅。
父の名前がそこには書かれていた。
しかしその江月家は父が皇本家の当主となり、”皇清雅”となった為に後継がいなくなって、あえなくその血筋を途絶えさせてしまう。
長く続いてきた”皇の一族”という歴史から消えたその家をこれ幸いと利用したのは、その一族を絶やした他でもない父であった。
それもそうですね、と微笑む彼に彼女が鼻を鳴らす。
｢伯母さん、父さんが好きなんですか？｣
それとも、母さんが嫌いなだけなんですか？
真っ直ぐな声に背筋が震えた。
何故、
自分を見つめる澄んだ瞳。
あの、寒気がする程に純新無垢な瞳。
吐き気すらした。あの家の血は何処まで自分を苦しめるのだろう、と。
｢……涼子はね、私から全部取っていったわ。
不細工で仏頂面なお父さんに似た私と、町一番の美人だったお母さんに似た涼子。
皆、涼子を可愛がった。｣
当たり前だ。今ならそう思える。
許嫁がいたのに母と結婚した父。
それ程までに父は母にぞっこんだった。
＿＿そんなの、心の底から愛する女に似た妹の方を可愛がるに決まっている。
分かってはいる。
それでも許せるわけがなかった。
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名前はまだない - イナイレ小説の中で1番好きです... 主人公のキャラや設定、性格などが刺さりすぎてやばいです。更新楽しみに待ってます！ (2021年7月3日 10時) (
レス) id: 567784a46c (このIDを非表示/違反報告)
あかや(プロフ) - コメント失礼します！！面白すぎて一気読みしてしまいました…主人公君のキャラ？性格？とても好きです！なんて言うか、飄々とした感じの… 続き待ってます！！ (2021年4月2日 16時) (レス) id: eed553f04a (このIDを非表示/違反報告)
夜 - 度々コメント失礼します！大好きな作品なので何度も読み返しては楽しんでいます！もし可能であれば、主人公が松風天馬君と同年代で帝国に入学という設定でイナイレgoシリーズの話を読んでみたいです！これからも作者様のペースで頑張ってください！ (2020年11月18日 14時) (レス) id: c9a43346ff (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：湯葉 | 作成日時：2020年10月7日 7時
