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｢答え、合わせ｣
｢ええ。｣
きっと貴女は全てを見破られていなければ話さないでしょう、と告げる彼の瞳は真剣だった。
｢……それを私が聞く義務はありますか？｣
｢そうですね、強いて言うなら……｣
何を、と笑い飛ばせるはずだった。
それなのに彼の言葉はいやに重たくて。
＿＿自分は変わろうとしているのだろうか。
確かに些細な不満はある。
しかしそれは自分だけに限った話なんかではなく、生きとし生けるものは、全てそういう小さな不満や苦痛を適度に噛み殺したり発散したりして生きている。
それでも自分はこの環境で確かな幸せと優越感を覚えて生きていられている。
押し黙ったメイド長を暫し眺めてから彼が話し始める。
｢この家ではたくさんの使用人の方々がそれぞれ役目を持って日々働いています。
爺やのように身の回りの世話をこなす男性の使用人である”執事”、僕や父さんだけでなくこの家にいる人全員の食事を作る料理人。
＿＿そして洗濯や掃除など家の管理を任されているのが貴女が率いるメイドの方々。そうですよね？｣
ええ、と僅かに訝しみながらも頷く。
メイド長の戸惑いを気に留めることもなく、彼はそこの見えない微笑みを湛えたまま続けた。
｢執事、料理人、メイド。
それぞれに代表である”長”がいます。
僕や父さんがメイド長、料理長と呼ぶのはごく自然なことです。
……しかし、料理長である高早さんは料理人の皆さんから”高早さん”と呼ばれますし、爺やだって”柳さん”と呼ばれています。｣
メイド長、貴女だけなんですよ。
彼が静かに呟く。
額に温い汗が滲んだ。
何故、何故そんなに些細なことから最短で真実に辿り着ける？
｢気になって数人に聞いてみました。
＿＿皆さん、貴女の名前をご存知ないんですね。｣
メイド長。
皆がそう呼ぶ彼女は、”メイドたちの長”でしかなかった。
｢……だから、なんだと言うのですか｣
苦し紛れの言葉に、彼は可哀想なものを見るような目で優しく微笑む。
貴方が一番分かっているでしょう、と。
｢”メイド長は自分の名前を教えてはいけない”みたいな規則はなかったので、きっと教えなかったのは貴女個人の理由でしょう。｣
間違いない。
確信してしまった。
彼は、
｢”円凛子”さん。いえ、
お久しぶりです。
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名前はまだない - イナイレ小説の中で1番好きです... 主人公のキャラや設定、性格などが刺さりすぎてやばいです。更新楽しみに待ってます！ (2021年7月3日 10時) (
レス) id: 567784a46c (このIDを非表示/違反報告)
あかや(プロフ) - コメント失礼します！！面白すぎて一気読みしてしまいました…主人公君のキャラ？性格？とても好きです！なんて言うか、飄々とした感じの… 続き待ってます！！ (2021年4月2日 16時) (レス) id: eed553f04a (このIDを非表示/違反報告)
夜 - 度々コメント失礼します！大好きな作品なので何度も読み返しては楽しんでいます！もし可能であれば、主人公が松風天馬君と同年代で帝国に入学という設定でイナイレgoシリーズの話を読んでみたいです！これからも作者様のペースで頑張ってください！ (2020年11月18日 14時) (レス) id: c9a43346ff (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：湯葉 | 作成日時：2020年10月7日 7時
