F92 #1 ページ7
「お前、いじめられてんの。」
急に話しかけてきた慧くんに心底驚いた。
自分から話しかけてくることなんてなかったのに。
あの日、慧くんが倒れた日。あれからも彼は変わらず部屋でご飯を食べている。
でも、前よりもたくさん食べてる。と思う。
この間はとんかつが綺麗さっぱり無くなっていて、宏ちゃんがすごく喜んでいた。
「なん…で……」
「教科書。」
二段ベッドの上から慧くんが僕の机を指さす。
いつもきちんと整頓しているはずの机の上には、この間大きく落書きをされた国語の教科書が開いて置いてあった。
「親無し。」
「…」
「捨て子。」
「…」
「施設の光。」
「…」
何も、言えない。
捨て子ではない。捨て子ではないけれどほとんど捨てられたようなものだ。
馬鹿にしろ。笑え。笑えばいい。
お前なんか、親に捨てられたんだって。
「ほんとひどい輩もいるもんだなぁ。」
布団にゴロンと寝転んで、慧くんが言った。
「職員には言わないの?」
「言わない。これ以上迷惑かけたくない。」
「そ。」
もっと、何か言われるかと思った。
問い詰められるか、貶されるか。
まぁでも今考えれば、慧くんが話しかけてきたの自体初めてだったんだもんな。
そんなに喋らないよな。
見慣れてきた背中をまた見上げた。
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青空と虹(プロフ) - わざわざ言っていただいたのにすみません……これからもよろしくお願いします! (2021年2月2日 2時) (レス) id: 4cc456b6d8 (このIDを非表示/違反報告)
ぷく顔信者(プロフ) - 青空と虹さん» いえいえ!了解しました、これからも応援しています! (2021年2月1日 21時) (レス) id: 802ab26e17 (このIDを非表示/違反報告)
青空と虹(プロフ) - ぷく顔信者さん» はじめまして!コメントありがとうございます。今のところ自分の作品はイニシャルを入れずに伝えたいな、と思っており、入れずに進める方針です。読みづらくなってしまい申し訳ないのですが、誰が話しているのか考察して欲しいな、という作者の我儘です。ごめんなさい! (2021年2月1日 20時) (レス) id: 4cc456b6d8 (このIDを非表示/違反報告)
ぷく顔信者(プロフ) - 初めまして!まだ数話しか更新されていませんが、楽しく読ませてもらっています(´˘`*) 差し出がましいのですが、鍵かっこの初めに誰が話しているかわかるようにイニシャルなど入れていただくことは可能でしょうか…? (2021年2月1日 19時) (レス) id: 802ab26e17 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:青空と虹 | 作成日時:2021年2月1日 0時