イルミナント

J41/F33 #2 ページ25

「ねぇ、けいくん？」

「……何？」

「パパとママってどんな？」




突然の質問に、何も言えず固まる。
どんな、どんなって……。




「どんな、だろうね。」

「けいくんはパパとママ、いる？」




彼の事情は知らない。
何も知らない。

どこに地雷が埋まっているかわからないところを目隠ししたまま通る気分。


何も言えない。





「だいちゃんはね、いない。」




はっきりと、やけにはっきりとしたその発音に怯んだ。



「だいちゃんはいないけど、さびしくないよ。けいくんは？パパとママは？」



この子は、６歳だ。たった６歳の子が、あそこに住んでいる人間全員に何かしらの家庭事情があることを理解できるはずがない。




「パパとママ、ね。」




いざ、口に出そうとすると唇が震える。
施設の職員にすら自分から伝えたことはない。
そもそもその事実が伝わっているのかすら知らない。




「パパとママ……ね、」


「…やっぱりいいや。」



またくっきりと輪郭を持った言葉が飛んできた。





「さびしくなかったら、いいもんね。」




俺の返答が遅かったから飽きてしまったのだろうか。
そんな俺の気持ちには無関心そうな顔をしてその子が笑った。

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