私は ページ4
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いそいそと布団から出て、畳む。
あんなにぐずぐずとしていたらあの人が起きてしまう。
起こしてしまわないよう廊下を歩き、朝食を作る。
なるべく時間がかからなくて、満足の出来るものを。
「…Aか。おはよう。」
後ろからいきなり声をかけられて、身体が跳ねる。
ゆっくりと後ろに振り向いて、それを悟られないような笑顔で『おはようございます。』と返す。
今起きてきたにしては随分ご機嫌そうな笑顔だ。
今日は機嫌がいい日だろうか。
『…朝ご飯、出来てますが、どうしますか?』
「ああ。今日は出かける。任務があるんだ。」
「だから、それは捨てといてくれ。」
さも平然とした顔で言う。
それに何もびっくりしない私も、もうおかしいんじゃないかって、心の中で自嘲する。
任務…?鬼はこんな昼間から出ないって聞いたけど。
彼は、私が何も知らない無知で馬鹿な少女と思っているんだろうな。
それを望まれたのだから、私はそれになる。
相手が静かな人形を望むのなら人形に。
万能で美しい女性を望むのなら言いなりに。
跪けと言われたら跪くし、
何処にも行くなと言われたら一歩も出歩かない。
死ねと言われたら─────
……なんてね笑。
あぁ、こんなにも醜い私を、
誰か。
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ねぇ。
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作者名:雫 | 作成日時:2020年11月22日 19時